◇この曲は「著作権消滅曲」です。
証城寺の狸ばやし (Shõjõji-no-Tanuki-Bayashi) 作詞・野口雨情 作曲・中山晋平 英訳・山岸勝榮© |
Tanuki Raccoons' Night Spree at Shojoji Temple Lyrics by NOGUCHI, Ujo Music by NAKAYAMA, Shinpei Translation by YAMAGISHI, Katsuei© |
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mp3「証城寺の狸ばやし」 (右クリック「新しいウインドウで開く」) |
A Comical Song of Tanuki Raccoons at the Shojoji Temple |
証 証 証城寺 証城寺の庭は つ つ 月夜だ 皆出て 来い 来い 来い おいらの友達ァ ぽんぽこ ぽんの ぽん 負けるな 負けるな 和尚さんに 負けるな 来い 来い 来い 来い 来い 来い 皆出て 来い 来い 来い 証 証 証城寺 証城寺の萩は つ つ 月夜に 花盛り おいらは 浮かれて ぽんぽこ ぽんの ぽん |
Sho-, Sho-, Shojoji Shojoji's inner garden A moon-, moon-, moon-lit night there Everyone, out. Come, come, come My friends are already out there Drumming on their belly, tap, tap, tap Hang in there, everyone Don't be outdone by the Priest Come, come, come Come, come, come Everyone, out. Come, come, come Sho-, Sho-, Shojoji Shojoji's bush clovers A moon-, moon-, moon-lit night and the bush clovers at their best I'm having a merry time, too Drumming on my belly, tap, tap, tap |
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参照:たぬきばやしのお寺 護念寺・證誠寺;證誠寺 Shojo-ji temple |
(山岸小夜子書)
以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。 |
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山岸勝榮教授 今回は、「証城寺の狸囃子」を取り上げ、山岸教授の御訳とGreg Irwin氏の訳を比較いたします。YahooボックスにPDFファイル「訳比較 10証城寺の狸囃子」がございますので、ご覧ください【下にpdfとして引用;山岸】。 【「証城寺の狸囃子」について】 この童謡は、千葉県木更津市にある證誠寺に伝わる狸伝説を元にして、野口雨情が作詞をしたものです。狸伝説については、Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%BC%E5%9F%8E%E5%AF%BA%E3%81%AE%E7%8B%B8%E5%9B%83%E5%AD%90に譲ります。 童謡「証城寺の狸囃子」は、狸の集団のリーダーとも言える大狸の視点で描かれています。1番では、大狸の「仲間」が月夜に証城寺の庭で囃子を繰り広げている様子が描かれています。2番の特徴は、1番とメロディーが異なっているところです。この2番では、1番で描かれていた狸の集団による囃子に、和尚さんが参加をし、「競っている」様子が描写されています。3番は、1番のメロディーにのせて、ついに大狸までもが、その囃子に参加し、皆で囃子を楽しんでいるという情景が読み取れます。ちなみに、證誠寺に伝わる狸伝説では、大狸が最後は腹を割って死んでしまいますが、童謡では、そのことには触れていません。 【山岸教授の「証城寺の狸囃子」Tanuki Raccoons' Night Spree at Shojoji Temple】 山岸教授がお訳しになった「証城寺の狸囃子」は原詞に沿った御訳になっています。敢えて原詞に沿っていない箇所を挙げるとすると、1番にございますMy friends are already out thereとDrumming on their bellyでしょうか。3番には、Drumming on my bellyもございます。まず、My friends are already out thereという御訳は、物語の流れを補うために訳されたと推測します。この文があることで、聞き手[読み手]は、庭に狸の仲間が出ているということが判断できます。続いて、Drumming on their [my] bellyは、情景描写として不可欠な表現です。この句が無く、ただtap, tap, tapとだけ訳出をしても、英語圏の人々には訴えるものが少ないはずです。「何を」叩いたのかを表現することが必要だと山岸教授はご判断なさったと思います。 今回の教授の御訳からもゼミ生は多くのことを学ぶ必要があります。わたくしが挙げるとすれば、まずDrumming on their [my] bellyです。原詞の1番と3番は、全く同じ歌詞「ぽんぽこ ぽんの ぽん」ですが、原詞を正しく理解出来なければ、腹を叩いた動作主が狸仲間か、大狸自身かは見当が付きません。原詞への理解度が試されている箇所ですが、山岸教授はこちらを正確に把握なさっているので、theirとmyをお使いになっています。英語で身体の部位を表現する際は、基本的に冠詞ではなく、所有格を用いること。そして、「誰の」を正確に理解することにより、山岸教授の御訳出が可能になるわけです。こちらの訳出法はゼミ生が学ぶべきことです。 その他、学ぶべき御訳は「庭」のinner garden、「花盛り」のat their best、「萩」のbush clovers、「負けるな」のHang in there、「和尚さんに負けるな」のDon't be outdone by the Priestなどが挙げられます。まず「庭」にinnerを加えることのできるゼミ生はいないでしょう。「花盛り」をat one's bestで表せることも勉強になります。同類の語を「この道」や「からたちの花」にて教授はin full bloomともお訳しになっています。類義表現として覚えておくべき語です。また、「萩」は直訳をしても英語圏で通じる語であるということも学ぶことができます。さらに、仲間を応援する表現としてHang in thereや、Don't be outdoneという表現があるということも勉強になります。 【Greg Irwin氏の「証城寺の狸囃子」Shojoji】 Irwin氏の今回の訳も独自の視点が含まれています。英語の発想法の違いという意味では非常に興味深いものが観察されます。 原詞の「視点」は前述の通り、大狸からのものでありますが、Irwin氏の訳はそのように解釈することが非常に難しいように思えます。Irwin氏は日本の唱歌、童謡を訳出する際に、かなりの「準備」をしているはずです。今回も、おそらく「證誠寺に伝わる狸伝説」を準備段階で知ったことでしょう。しかし、その伝説に沿わない形で訳出していることが非常に興味深いところです。 続いて、「庭」「萩」「おいら」「負けるな」などの訳出がありません。また、原詞の「和尚さん」は一人と考えるのが日本人でしょう。しかし、Irwin氏は複数形で表しています。日本語と英語の発想法の違いが表れているところです。 次に一見すれば分かることですが、原詞は3番までしかありませんが、Irwin氏の訳は4番まであります。氏の2番の英訳は、物語の流れに不可欠なものではなく、韻を重視した一種の「遊び」のように感じます。その「遊び」をもう一つ、3番の後に加えたと考えます。 その2番、4番も含めまして、全体的にIrwin氏の訳は、リズム、韻を重視していることが分かります。極めて英語らしい歌詞と言えます。今回の訳出に限ったことではありませんが、音の面を重視することと引き替えに、原詞の忠実度を失っているようにも感じてしまいます。 【小考察】 ゼミでは翻訳を通じて、日本語を正しく理解することの大切さを学んでおります。たとえ英語力が優れていても、原詞を正しく理解できなければ、正しい翻訳は成り立ちません。原詞の徹底した理解を最優先課題と捉えることがゼミ生には必要であります。その上での英語力ということになるでしょう。山岸教授の御訳からは、翻訳におけるその二つの重要な要素を学ぶことができます。このような訳の比較だけではなく、御訳を音読したり書写したりすることで、真の翻訳を肌で感じることができると存じます。 Irwin氏の訳出のように、リズムを大切にする詞というのも英語らしさという点では非常に興味深いことではあります。しかし、全ては、原詞を正しく解釈することから始まると考えます。唱歌・童謡の翻訳において、響きの心地よさは当然考慮すべき点ではありますが、まずは原詞を正確に把握することが何よりも大切であります。 平成25年8月25日 大塚孝一
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