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秋の夕日に 照る山紅葉 濃いも薄いも 数(かず)ある中に 松をいろどる 楓(かえで)や蔦(つた)は 山のふもとの 裾模様(すそもよう) Sunset on the mountains, the fall trees aglow 2. Autumn leaves at sunset on the mountain streams afloat この曲は著作権消滅曲です。
下の写真は、クルージュ・ナポカ(Cluj Napoca)にあるルーマニア国立美術館に於いて 開催された「武道の精神」(Spirit of Martial Arts)展で、ルーマニア・日本国交回復 50周年記念行事の一環として、日本の歌である「紅葉」(Momiji)ほか計5曲を日本語で 披露なさったLavinia Bocuさん(Mezzosoprana)。 縁あって、私が「紅葉」の楽譜、歌詞 のローマ字化を準備した。(写真・ビデオの掲載についてはご本人の了解済み。) |
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以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。 |
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山岸勝榮教授 山岸教授のAutumn Leaves (MOMIJI)とGreg Irwin氏のDream Autumn Dreamsを比較考察いたしました。Yahooボックスに比較の資料「訳比較 08 紅葉」がございます。ご覧ください(PDFを下に引用;山岸)。 【原詩と山岸教授の「紅葉」】 1連は、山々を彩る紅葉の情景を心地よい七七調で描写しています。2連は、渓に流れる(小)川の水面を、盛りを過ぎた紅葉がなおも鮮やかに彩る光景を、1連同様に七七調で描写しています。 その原詩に極めて沿ったかたちで山岸教授は訳出をされています。山岸教授がお選びになる語・表現はいずれも学ぶべきものでございます。その中でも特にわたくしを含めましたゼミ生が学ぶべき翻訳技法は、1連4行目、2連4行目のweaveだとわたくしは考えます。2連は「織る」が原詩にございますので、わたくしが訳出を試みたとしましてもweaveを用いると思いますが、1連に同様のweaveを用いることが今のわたくしには不可能でございます。おそらく、1連のweaveは、2連の原詩「水の上にも」の「も」を忠実に訳に反映なさった結果ではないでしょうか。「も」は、alsoやtoo、またはas wellなどで訳出が可能でございますが、それでは、趣が感じられないと教授はお感じになったのだと存じます。そこで、「も」の意味を深く分析なさり、「山を彩る紅葉」と「水面『も』彩る紅葉」とお考えになり、2番同様のweaveを1番にもお使いになったのだと勝手ながら推測しております。山岸教授が原詩をいかに大切になさったかを表す一例であると考えます。 もう一つ言及すべき翻訳技法がございます。それは、1連1行目のthe fall trees aglowと2連1行目のthe mountain streams afloatが韻を踏んでいるという点でございます。具体的には、treesとstreams、そしてaglowとafloatでそれぞれ押韻しています。しかし、それだけではなく、これらの表現がいわゆる「対句」になっている点にも注目すべきだと考えます。このような非常に高度な表現技法は一朝一夕に身につけることはできませんが、このような技法が日本語だけではなく、英語にもあるということを知るだけでも勉強になります。おそらく他のゼミ生も同様のことを思うのではないでしょうか。 【Irwin氏の「紅葉」】 Irwin氏の「朧月夜」の英訳を考察した際、自然を「ただ」描写する原詩に対して、Irwin氏独自の視点を加え、それを英訳に反映させていると述べました。そしてその独自の視点とは、dreamやmagicなど、原詩からは到底読み取れない語や、恋愛を連想される語であることも仮説として述べました。 今回の「紅葉」も前述したように、自然の美しさを「ただ」歌っているものでございます。つまり、「紅葉」も「朧月夜」も同種の歌詞と捉えて差し支えはないはずです。それでは、先ほどの仮説を検証してまいります。 まず、1番、2番に、原詩からは読み取れない語dreamが見られます。動詞のdreamもあれば名詞のdreamもあります。いったい「紅葉」の原詩を見て、「夢を見る」「秋の夢」を連想する日本人がいるでしょうか。おそらく皆無でしょう。 続いて、恋愛を想像させる語としては、2番にありますThe loveliest sight you’ve ever seenやDream Autumn dreams with meが挙げられます。 「朧月夜」に引き続き、「紅葉」でもわたくしが立てた仮説は間違っていなかったということが認識できました。 なぜIrwin氏がこのような独自の視点を入れて訳出をするかは本人のみぞ知るところではございますが、やはり、日本人が「自然」に対して抱く気持ちと、アメリカ人のそれとでは、かなりのズレがあるということも一つの要因ではないでしょうか。日本語の「自然」と、その訳語にあたる“nature”とでは暗示的意味(connotation)にズレが認められることからも、そう言えるように思えます。今後も引き続きこの仮説は検証する必要がございます。 その他、Whispering pinesのWhispering、wandering ivyのwandering、moonlight、tonight、rainbows、tapestryなど、原詩には無い語が散見されます。moonlightやtonightを訳出したのは、おそらく脚韻を踏むためでしょう。rainbowsは、「色さまざま」にあたる訳語でしょうが、「紅葉」から「虹の色」を連想する日本人はいないでしょうし、青・藍・紫が、実際に「紅葉」が織りなす光景にある色だとも思えません。tapestryは「錦」でしょうが、こちらも適切な訳語とは言えないのではないでしょうか。ちなみに、最初に挙げたwhisperingやwanderingは擬人法として用いられていますが、これも前回の「朧月夜」の英訳に見られた修辞技法で、Irwin氏の訳出の「癖」かもしれません。 【小考察】 今回もIrwin氏の“独自”の解釈が随所に見られた訳でした。何度も繰り返しますが、Irwin氏の訳は、原詩には無い氏の“想い”が訳に強く反映されすぎて、もはや原詩とは別の作品としか思えません。ただ、氏の訳語から背景にある「英語の発想」を掴むことができますので、今後も比較を続けてまいります。 実はこの訳比較をしております過程で、Irwin氏のこの訳が、中学校の「道徳」の教科書の副読本(平成19年版)に掲載されていた事実を知りました。わたくしはこの事実を知ったとき、愕然としました。なぜ、「道徳」の教科書の副読本に唱歌の英訳が掲載される必要があるのか。なぜこれだけ創作に近い氏の英訳を掲載する必要があるのか。甚だ疑問が残ります。上述の副読本は東京書籍が発行していたものですが、編集者の見解を訊いてみたいところではあります。 道徳の授業よりも、英語の授業の方がより適切な教材になるのではないでしょうか。山岸教授の御訳にもIrwin氏の訳にも、教科書ではなかなか出てこない単語もございます。しかし、英語教員が解説を加えれば、中学生でも理解ができるような表現ばかりです。例えば、中学校の英語の授業で、英語教員が訳のプリントを用意し、比較させるというような授業であれば、日本人が考える「紅葉」とアメリカ人が考える「紅葉」が比較され、非常に興味深い授業が展開できると個人的には思います。 平成25[2015」年8月16日 大塚 孝一
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