赤とんぼ
(Aka-Tonbo)

作詞:三木露風
作曲:
田耕筰
 
英訳:山岸勝榮©

Red Dragonflies
Lyrics: MIKI, Rofu
Music: YAMADA, Kosaku
English Translation: YAMAGISHI, Katsuei
©)

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夕焼け小焼けの
赤とんぼ 
負われて見たのは
いつの日か

Red dragonflies at sunset, red in the afterglow
Could it be the last time I saw their flight I was a child
On my Nanny's back?


山の畑の 桑の実を
小籠
(こかご) に摘んだは
まぼろしか

Dark purple mulberries in the hillside fields
I gathered them into my little basket
Was that a dream or real?


十五で姐
(ねえ)やは 嫁に行き
お里のたよりも
絶えはてた

Just fifteen, dear Nanny traveled far away, became a bride
Since then not one word comes
From my sister dear


夕焼け小焼けの 
赤とんぼ
とまっているよ 
竿
(さお)の先

Red dragonfly at sunset, red in the afterglow
There on the bamboo fishing pole it rests
As I remember


無断引用・使用厳禁 Copyrighted©


赤とんぼを「負われて見た」子どもは、だれの背に負われていたのか。素直に考えれば、三番の歌詞に出てくる十五で嫁に行った「姐(ねえ)や」だろう。明治時代、雇われた先で子守をした姐やたちは、あどけなさが残る少女だった。いや違う、この歌が懐かしむ背中は姐やではなく母親のそれだ、とする見方がかつて根強かった。四番まである詞のどこにも「母」は登場しないにもかかわらず、歌の背景に詳しい人の間でも、そんな主張が聞かれた。作詞者・三木露風(1889-1964)の生い立ちには、その声に同意したくなる要素が確かにある。(中略)しかし、「負われて」論争にはすでに決着がついている。詩の生まれた経緯を露風自身が記した文章が出てきたからだ。それによると彼は、やがて洗礼を受ける北海道・函館のトラピスト修道院で窓の外に赤とんぼを見て、幼い自分を背負った子守娘を思い出したという。詩は1921年(大正10)、童謡雑誌「樫(かし)の実」に発表された。32歳の時のことだ。(中略)
 89年、NHKが募集した「日本の歌 ふるさとの歌」に全国から65万通を超す応募があった。5千曲以上の歌の中で『赤とんぼ』は第1位に選ばれる。北海道から鹿児島まで26の都道府県で一位となり、ベスト3から漏れたのは4県だけだった。(中略)九州の男性が「この詩は、日本全国どこの夕暮れ時にもマッチする。なぜだろう」と書いていた。
 なぜだろう。はっきりしているのは、この歌に懐かしさを感じない人はいないということだ。古里と呼べる土地をもたない人はいても、自分を生んだ母をもたない人はひとりもいないように。― 読売新聞文化部編『唱歌・童謡物語』(岩波書店、pp.190-192)

夕焼けの壁紙はこちらから拝借しました。
赤とんぼの写真はこちらを拝借して加工しました。

こちらに私の英訳を使用した、アメリカ人音楽家(Michael J. Holderer氏)による「赤とんぼ」の分析があります。



【参考】以下の文章は「山岸教授の日英語サロン」(2008[平成20]年2月18日分)に書いたものです。

「赤とんぼ」の英訳のこと

拙訳の「赤とんぼ」(Red Dragonflies)をWeb検索にかけていたら、たまたま以下のような文章に出合った(出典はこちら)。

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 三番目の論争は“ねえや”とは「子守娘」か「姉」かという問題。子守娘が順当な解釈だろうと思うのだが、姉とするものもある。


  山岸勝栄氏の英訳 Red Dragonfliesはこうしている。

  Just fifteen dear Nanny traveled far away, became a bride
  Since then not one word comes
  From my sister dear

   Nanny(子守娘)=sister(姉)と解釈しているのだろうか?ああ、ややこしい。
 露風の詞がこんなに異論の多いものとは知らなかった。

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 この「Nanny(子守娘)=sister(姉)と解釈しているのだろうか?」という疑問だが、私はそういう解釈をしていない。英語のsisterは「姉・妹のような[ように親しい]ひと」の意味で用いることもあり、私は当然、その意味で用いている。要するに、"my sister dear"は親しみを込めて"dear Nanny"(子守の(ねえ)や)に言及したものだ。
 
上記の疑問は「sister =姉・妹」と直結させたために生じたのだろうが、そういう結び付け方は、いかにも「日本人英語学習者的」だと思う。



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