ずいずいずっころばし
(Zui zui zukkorobashi)

                            わらべ歌
                                  英訳:山岸勝榮 (C)

Gooey, Gooey, Soft and Sticky

                         Japanese Traditional Children's Song
                               English Translation: YAMAGISHI, Katsuei (C)




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MIDI

こちらにはYouTube版の「ずいずいずっころばし」があります。
こちらには山梨県都留市に残る「お茶壺道中」の様子を再現した動画があります。
こちら→は「徳川家康公が愛した熟成本山茶・駿府お茶壷道中行列」
こちら→は「初夏の風物詩「奈良井宿お茶壷道中





ずいずいずっころばし
ごまみそずい
茶壺
(ちゃつぼ)に追(お)われて
とっぴんしゃん
(ぬ)けたら、どんどこしょ
(たわら)のねずみが
(こめ)(く)ってちゅう
ちゅうちゅうちゅう
おっとさんが呼
(よ)んでも
おっかさんが呼んでも
(い)きっこなし
井戸
(いど)のまわりで
お茶碗
(ちゃわん)(か)いたのだぁれ



Gooey, gooey, soft and sticky
Sesame miso, gooey
Driven off by the chatsubo
Doors all slammed shut
When it goes past, let's party hearty!
Mice in rice bales
Eat rice and squeak
Squeak, squeak, squeak
Even if Dad calls
Even if Mom calls
You shouldn't go!
Somewhere near the well
Who dropped and chipped a rice bowl?



無断引用禁止 Copyrighted







●この歌には著作権はありません。
●MIDIはこちらからお借りしました。
●写真はこちら(上)こちら(下)からお借りしました。



下の文章は大学院修士課程2年生の大塚孝一君によるものです。
興味深い分析ですので、同君の了解を得て転載します。


山岸勝榮教授

 「ずいずいずっころばし」の御訳を拝読し、分析を試みました。ご多忙のところ恐れ入りますが、ご一読くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

【音遊びの要素】
 「ずいずいずっころばし」の歌詞には、かなりの音遊びが含まれています。それは歌詞を眺めているだけでも分かるでしょうが、歌ってみると、その音遊びがより感じられるはずです。山岸教授の御訳には、その音遊びの要素がかなり維持されているという特徴があります。まず、1行目の「ずいずい」ですが、この箇所にはgooeyという形容詞が当てられています。/gu:i/という発音ですから、「ず」とgの有声音、そして「い」とiの類似音が、原詞にぴたりと当てはまっていることが分かります。次は「ずっころばし」の「ず」と「ば」に見られる濁音の繰り返しです。山岸教授の御訳では、濁音ではないのですが、softとstickyの頭音のsが心地よい響きを作り出しています。その後に続く「ごまみそ」の箇所では、sesamiのmiとmisoのmiが同音になっているため、歌いやすいと考えられます。続いて、slammed とshutのsの反復、その次の行にあるpartyとheartyの脚韻、mice in riceの/ai/の反復などが音遊びの箇所としてあげられます。これらが有ることにより、原詞の持つ音遊びの要素が、英語からも味わうことができます。
 この度、「さくらさくら」「ほたるこい」「村祭」「雪」「ずいずいずっころばし」の御訳が、日本語教本に掲載されるとのことですが、おそらく、前者4曲は「春夏秋冬」を歌ったものであるということが多少なりとも選曲に関係しているように思えます。しかしそれだけではなく、御訳が表す原詞への忠実度、歌いやすさ、そして、脚韻、頭韻などの音の要素がふんだんに盛り込まれている英訳という点も、出版社側の選ぶ基準になっているかとも思われます。

【原詞の持つイメージ 〜「ねずみ」の例〜】
 原詞中の「ねずみ」ですが、山岸教授はmiceとお訳しになっています。「ねずみ」は英語でratかmouse(複数形はmice)ですが、前者はマイナスイメージを持つ単語で、わらべ唄には相応しくありません。
 日本の童謡・唱歌には、かわいらしいものが多く出てきます。これらは、日本人には共通して、「可愛い」と思えるものですが、他の言語に訳されると、そのイメージが損なわれる可能性があります。文化が異なるためです。童謡・唱歌を翻訳する際にはこの点に注意を払う必要があります。例えば、山岸教授の御訳には、“可愛らしさ”を表すlittleがかなりの頻度で使われています。原詞には文字として表れていないものの、日本人であれば、誰もがそのものの可愛らしさを思い描くものには、littleが添えられています。別の例ですが、「月」の訳語もthe moonの他に、the old full moon、the bright moon shining、the midnight moon、the full moon、my dear old full moonというように、様々な訳語が当てられています。歌によって「月」が持つイメージが異なるためです。このように、原詞のイメージをできる限り忠実に訳すことが翻訳では求めらます。その意味では、山岸教授がmiceをお使いになった理由は、翻訳論において、極めて重要な点であると言えます。

【“動き”を表すdropped】
 最終行の「お茶碗欠いたのだぁれ」にはdropped and chippedが用いられていますが、何の“作用”でお茶碗が欠けたかということが御訳から分かります。ただのchippedでは、詳しい描写が無いため、英語が味気なく、読み手とっては“user-unfriendly”な訳出ということが言えるでしょう。同様の訳出法は「鳩」にも見られます。同曲第1連の最終行「食べに来い」では、山岸教授はPick and eat themとお訳しになっています。単にEat themとするのと、Pickが加えられているものを比べるとその違いは歴然です。後者には“動き”が読み取れるため、読者は容易にその光景を想像できるでしょう。同時に、このPickは、言葉を尽くす英語ならではの表現とも言えるでしょう。日本語とは対照的な一面ですが、このような比較対照を行うことで、日本語、英語の特徴に気がつき、より深くその特徴を掘り下げることができるはずです。

 平成26[2014]年9月20日
    大塚 孝一