この英訳は平成27年 [2015年] 2月、New York (Park Avenue South) の Kodansha America, Inc発行の外国人用日本語教科書WADAIKO―An Introduction to the Sounds and Rhythms of Japanese (CD付き)に、他の4曲【「ずいずいずっころばし」(Gooey, Gooey, Soft and Sticky)、「さくらさくら(Cherry Blossoms)、「ほたるこい」(Fly, Fly, Firefly, Come)、「むらまつり」(The Village Festival) 】と共に収録されている。



(ゆき)YUKI
作詞者・作曲者:不詳
英訳:山岸勝榮©)

SNOW
Lyrics:Unknown
Music: Unknown
Translation: YAMAGISHI, Katsuei ©


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  1.
雪やこんこ 霰
(あられ)やこんこ
  
降つては降つては ずんずん積(つも)
 
山も野原も 綿帽子(わたぼうし)かぶり
枯木(かれき)残らず 花が咲く


  2.
雪やこんこ 霰
(あられ)やこんこ
降つても降っても まだ降りやまぬ
犬は喜び 庭 駈
(か)けまわり
猫は火燵
(こたつ)で丸くなる

1.
Snow is falling down-down, hail is falling down-down
Whirling down and whirling down, piling up thick and deep
All the mountains, all the fields, will be wearing white vails
Empty branches of the trees will fill with blossoms new


2.
Snow is falling down-down, hail is falling down-down
Whirling down and whirling down, and not stopping yet
Our dog leaps and frisks and plays in the drifting yard
While the cat curls up and dreams in the kotatsu
無断引用・使用厳禁 Copyright© Katsuei YAMAGISHI
「雪(ゆき)」に著作権はありません。
犬のイラストはこちら猫のイラストはこちら
からお借りしました。 

            

以下の文章は私のゼミの受講生・佐々木健史君の手になるものです。
興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。

山岸勝榮先生
 『雪』の英訳比較を行いました。山岸先生の御訳とマザー・ターキー氏の訳とを比較し、気づいた点や発見した箇所、疑問に思った箇所などの考察を以下に掲載致します。


<比較の前に>

 マザー・ターキー氏編訳『英語でうたおう日本の童謡』から、上記のように比較を行いました。氏に関してですが、本名は「大瀧公子」さんです。日本人であり、女性の方です。本書籍の他に続編となる『こんども英語で歌おう日本の童謡』、同編訳のCDがあります。書籍版はそれぞれ2005年、2007年の発行ですが、既に絶版となっております。また、氏に関しての情報がインターネットなどでも見つからないため、どのような方かは不明です。書籍には「戦中戦後の幼児期に祖父母や両親とたくさんの童謡を歌った」とありますので、氏の年齢は喜寿を迎えるくらいかと思います。

【詩に関して】
 『雪』の作者、作曲者は不詳であり、明治44年(1914年)の『尋常小学校唱歌(二)』が初出です。詩にあります、「こんこ」ですが、「来む(=降れ)」から、「来む来む(=降れ降れ)」、「来む此(=ここに降れ)」という2語の解釈があり、最初は「雪よ、もっと降れ降れ」という意味ではなかったのかとされています。

【英訳の違い:1連目】
 山岸先生の英訳、氏の英訳は、原詩に忠実ではありますが、表現にはかなりの違いが見られます。
 1連目1番、「こんこ」の箇所であれば、【詩に関して】であげたように、「降れ降れ」という意味が含まれていると思います。山岸先生の御訳には「down-down」とありますが、氏の英訳は直訳的であり、それらが見られません。また、「あられ」の箇所では「beat」という表現を用いており、訳出をした本人に訊かないとわかりませんが、おそらく「あられ」という語からこの単語を選んだのではないかと思いました。
 2連目、「ふってはふっては」の箇所は、山岸先生の御訳を拝見いたしますと、「雪とあられ」が「舞う」ことがわかり、イメージがたやすく感じられます。 氏の英訳では1番目と同様の訳出をしています。雪やあられに抱くイメージとしては、氏の英訳では些か訳出不足ではないかと思いました。また、「ずんずん つもる」の箇所でも、英訳に違いがあります。日本人であれば、「ずんずん つもる」で意味を理解できますが、英語圏の人がこの詩を読んだ際に、「どう」雪がつもるのか、おそらく疑問に感じるのではないかと思います。氏の英訳だと「high and high」とあり、高く積もることはわかりますが、詳細まではわかりません。
 3連目の氏の英訳からは、原詩とは違う箇所があります。「やまも のはらも」の箇所では冠詞がなく、また、「やま」が、「小山」となっています。日本は山々にかこまれた地域が多くあり、山岸先生の英訳と氏とのを比較すると、違いは明確です。こちらも本人に訊く以外はありませんが、視点から、「hills」と訳出したのではないかと考えられます。
 また、「わたぼうしかぶり」の箇所では、山岸先生の御訳には「will be wearing」とありますが、氏は「are putting on」と、動作と状態と、違いがあります。
 4番目では、「花」の御訳の表現が違います。山岸先生、氏の御訳は「雪の花」というのは連想できますが、枝だけの木々に雪が降ることにより、「新たに(雪の)花で満たされる」こと、「雪の花で満たされる」と、意味は似ていても表現の違いがあります。氏の英訳は直訳的だと思いました。一つひとつの御訳の違いで伝わり方が変化することが解る箇所でもあります。

【2連目】

 2番目の「まだ降りやまぬ」では、山岸先生の御訳ですと、「not〜yet」が用いられておりますが、氏は「never」を用いています。何故「never」を用いたのか、ここも本人に訊く以外にありませんが、原詩と比べると強調して否定をしているように感じられ、原詩の「あられ」が降る雪とは違う解釈をするのではないか思います。また、「piling」を用いたことにより、しつこくも感じられました。
 3番目、4番目と、山岸先生の御訳、氏の英訳とでは、多くの違いがあります。「犬」では、「Our dog」と、原詩にない御訳がなされております。1連目、2連目の2番までの御訳では客観的な視点だと思いますが、ここから「Our」が出てきます。山や野原から、家の「庭」に視点が変わり、庭を喜んで駆け回るということから、室内にいた飼い犬が、雪が積もった庭に出て遊ぶ様を想像できます。氏の英訳では、「子犬」が訳出されています。何故子犬なのか、疑問に思う箇所ですが、女性ならではの訳出であり、また、犬の可愛らしさを表現したくこの表現を用いたのではないかと思ました。
 「庭」の英訳では、氏の英訳に疑問を感じました。「garden」ですと、日本の庭からは連想しにくい訳出だと思います。原詩の庭に関しての深い解釈が必要とされる箇所にも見受けられます。また、「garden」を用いるのであれば、例えば「small garden」などとすればよりイメージが湧きやすいのではないかと思います。
 「猫」の箇所では、「こたつでまるくなる」とあります。山岸先生の英訳では、「丸くなって夢を見ている」と猫が丸くなった時の状況や特徴が明確に表現されております。また、「こたつ」をそのまま訳されたのは、日本の寒い時期には必ずと言って良いほどこたつがあるため、日本の冬独特の文化の一つとして訳されたものだと思いました。おそらく英語圏の人には「こたつ」と言っても最初は理解出来ないと思いますが、詩から連想が出来ると思います。一方、氏の英訳では、「子猫」が訳出され、また、「まるくなる」ではなく、別の表現が用いられております。そして、「こたつ」ではなく「fireplace」と「暖炉」が出てきます。どういった解釈でこの語を選んだかはわかりませんが、原詩の持つイメージと相違がみられます。

【考察】
 「雪」の童謡からは、雪やあられが降り、冬の美しい情景が歌われておりますが、これは日本人が古来より自然と共存していることを示していると思います。四季を楽しむ文化があり、また、それはこの詩からも伺えると思います。今回の英訳比較で感じたことは、同じ日本人の翻訳であっても、一見似たようで、じつは違う箇所が見られるということです。翻訳者が原文をそれぞれどのように解釈するかにより、訳出された一つひとつを英語圏の人が見た際に、その詩から受ける印象も変わっていくのだと思います。違いを発見した際には、「何故」と疑問に思い、それに仮説を立て、立証できるようにさらに考察を行いたいと思います。

 平成25「2013]年9月26日
           佐々木 健史



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