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1. むかしむかし浦島は Long ago, long ago, Urashima-san 2. 乙姫様のごちそうに 鯛やひらめの舞踊り ただ珍しく面白く 月日(つきひ)のたつのも夢のうち Dishes
spread out by the Princess 3. Tired of
playing and bringing him back to himself 4. Returning
to his hometown, he found 5. 心細さに蓋(ふた)取れば Feeling
helpless, he opened the casket Copyrighted© |
この詞・曲には著作権はありません。 |
イラストはこちらからお借りしました。 |
以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。 |
ゼミ生の皆さん 今回も山岸教授の御訳と他の方の訳を比べ、そこから学べることを記します。浦島太郎は比較的外国でも有名な話のようで、物語としての「浦島太郎」は英訳されているものがインターネット上ではすぐに見つけることができます。一方の唱歌としての「浦島太郎」の英訳はなかなか見つけることができませんでした。しかし、ようやく英訳を一つ見つけたので、そちらを比較の対象とします。以下のホームページにありました。Mother Turkey氏による英訳です。http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/7211/warabeuta/urashima.html 今回も原詩と山岸教授の御訳、Turkey氏の訳を比較するためにPDFファイルにまとめました。いつものようにYahooボックス内の「共有」からダウンロードをしてください(本稿最下段の「浦島太郎」英訳比較のpdfを参照―山岸)。 【主語】 今回山岸教授の御訳をゼミ中に拝読し、真っ先に気がついたことは、主語がほぼ統一していることです。山岸教授の御訳においては、主語はほぼUrashimaで統一されています。5番まで歌詞がある中で、主語がUrashimaではない箇所はたったの四カ所です。一方、Turkey氏の訳では、乙姫様が主語になったり、鯛やヒラメが主語になったりして、主語が統一されていません。これは、私たちのゼミ生の英訳にも言えることでした。 【原詩への忠実度】 山岸教授の御訳とTurkey氏の訳を比べてみると、原詩への忠実度がまるで違います。まず、原詩が訳出されていない箇所を比較してみます。山岸教授は極めて原詩に忠実に訳出なさっています。該当箇所を挙げるとすると、「乙姫様」と「蓋」くらいでしょう。教授は「乙姫様」にthe Princessという単語を充てていらっしゃいます。「蓋」は該当訳出語がございません。これは英語の慣用的なものであり、open the casket [box]とすれば、おのずと「蓋」を開けるということがわかるためだと考えられます。 それに対し、Turkey氏の訳では、例えば、1番4行目の「絵にもかけない美しさ」という原詩に対しては、訳出語がありません。同様の事が2番3行目の「ただ珍しく面白く」にも言えます。 それとは反対に原詩に無いことを訳出しているところを見てみましょう。山岸教授の御訳における該当箇所は、強いてあげるとすれば、1番2行目のfrom dangerがそれに当たるでしょう。しかし、from dangerがなければ、亀が浦島太郎を竜宮城に連れて行く理由が無くなり、物語の流れが崩壊してしまいます。この箇所における原詩への"非忠実度"は筋を通すため必要な英訳だったと考えるのが自然です。 一方のTurkey氏の訳では、例えば1番4行目のRiding the back of the turtleがそれに当たります。3番3行目のSo the princess, with the warning never opening it,も原詩には無い英訳です。 ここで、視点を少し変え、Turkey氏の訳出にあるピリオドに目を向けてみます。前回の「赤い鳥 小鳥」の際にも述べましたが、詩におけるピリオドというのは珍しいものです。(歌)詩にあえてピリオドを打ってある理由を考えると一つの仮説が成り立ちます。それは、おそらくTurkey氏は、この(歌)詩を物語りとして捉えたのではないかということです。ピリオドを打つということは、ある種、「詩」という表現を捨て、文章を書いたと言ってもいいでしょう。そう考えることで、なぜ原詩にはない、「亀の背中に乗った浦島太郎」や「乙姫様の忠告」を訳出した理由が分かります。つまり、原詩に忠実であることよりも、原詩の元になった物語に忠実であることに重きを置いた訳となるわけです。ゼミ生の中にも物語性を強調しすぎた訳出をした学生もいました。冷静に振り返ると、物語性を強め、原詩に対して忠実ではなくなることにより、中途半端な英訳になるのではないでしょうか。今回の課題曲の英訳は、前回の課題曲であった「赤い鳥 小鳥」に引き続き、極めて原詩に忠実でシンプルな訳出を心がけるべきだったのでしょう。 一つ個人的な興味を持った箇所は、5番4行目の「太郎」です。これをTaroと訳出をしたゼミ生は2人しかいません。私は1行目でUrashimaとしか訳出していなかったため、5番最終行で突然Taroを出すことに抵抗を感じました。日本人なら浦島=太郎ということは誰でも知っていますが、英語のネイティブにはそれが分からないだろうと思ったからです。しかし、物語という性質、そして英訳の巧みさが組み合わさったとき、英語のネイティブにも日本人と同じように、"Urashima=Taro"が成り立つということを教授の御訳から学ぶことができました。もっとも、題名が「浦島太郎」であり、浦島がしたことが書かれていること訳を読めば、誰にでも「浦島=太郎」ということがわかるのではないかと思います。題名の大切さということも学んだことと言えます。 【前期を通して】 本日の授業時に教授が「言葉の宇宙」というお言葉をおっしゃいました。宇宙とはコスモス、つまり、秩序のある体系を意味します。しかし、私には言葉が体系を持っているようには思えません。それくらい言葉というものは奥深いものであるということを痛感したゼミでした。何とか教授の御訳から一つの理論を見つけ出そうとしましたが、今以てできておりません。その手がかりすら見つけることができません。 毎回、ゼミ終了10分前に教授の御訳を拝見し、常に御訳に驚嘆し、自らの訳出との差を痛感し、悔しい気持ちでいっぱいになります。私は小学6年生から公文で英語を始めました。今年38歳になります。およそ四半世紀英語を勉強してきましたが、この程度の訳出しかできない自分に腹が立ちます。原因は日本語・英語がまるで分かっていないことにしかありません。この悔しさ、腹立たしさを原動力とし、夏休み、そして後期と勉強、研究してまいります。 山岸勝榮教授、日本語と英語のご指導を誠にありがとうございました。 現ゼミ生と特修生のみなさん、今後も一層の切磋琢磨をしてまいりましょう。 平成25[2013]年7月16 日 大塚 孝一 「浦島太郎」英訳比較 pdf(こちら) |