20.紙の辞書、電子辞書
       ―その利点、弱点に関するメモ


紙の辞書の利点

1.一覧性:目に入ってくる情報量が電子辞書の場合よりもいっそう多く、それゆえ、求める語義や用例の周辺にある情報(たとえば、語法欄・類語解説・日英比較など)に目が行く可能性も高い。それがきっかけで、英単語の世界が多方面に広がっていく可能性もまた高い。◆電子辞書の場合、目指す語義がわかれば、ほかの情報までは読まない利用者も多い。利用者の中には、最初に出てくる訳語で済ませようとする者も少なくない。理由としては、3.の「メッセージ性」の不足・欠如が考えられるし、画面のスクロールや、用例などを別表示しなければならないことが面倒に感じられるという点も考えられる。


2.情報量目測可能性:紙の辞書では、上記した「一覧性」があるので、ある単語を調べた場合、その単語にはどの程度の情報が関連しているかを目測できる。それによって、自分が調べている単語の情報保有量や重要性などを推測できる。

3.メッセージ性:紙の辞書には色分け・活字サイズの選択・書体の選択・イラスト・図版等、学習者の利便を最大限に考えた様々な工夫が施されている。これは学習者にとっては、記載されている情報が読みやすかったり、覚えやすかったりするし、そうした辞書の工夫には意味がある(例:どの情報に優先性があるか)という点を知ることにも繋がる。

4.書込み可能性:ある単語を引いて、重要だと思う箇所に下線を施したり、色付けをしたり、関連情報を書込んだりすることができ、それが単語の記憶定着に繋がる可能性が高い。

5.綴り字の定着性を強固:紙の辞書は目的の語の訳語を見ようとする場合、その語の綴り見ながら引くか、記憶を頼りに引くことになるが、それゆえに、綴りが視覚を通して記憶に残る可能性が高いものと思われる(電子辞書の場合、綴りに自信がなくても、候補の語を示してくれて便利であるが、それゆえに、視覚を通して、単語を記憶に留めようという意識を利用者に起こさせないかも知れない)。

6.時間の無制限性:電子辞書は電池利用のため、生徒・学生とかなりの時間、あるいは長時間利用するような場合には、電池切れの恐れを考慮に入れておかなければならない。これに対して、紙の場合には、そういう心配は全くないため、無制限に利用できる。


紙の辞書の弱点

1.重量があり、複数の辞書を持ち運ぶのは面倒

2.慣れていないと、特定の情報にたどり着くまでに時間が掛かる。

3.英語の苦手な生徒・学生の場合、目的の語の情報にたどり着くまでに時間がかかるため、辞書を引く行為自体をストレスと感じる者もいる。この点、電子辞書だと、(綴りが曖昧でも候補を挙げてくれるなど)利用者には便利に感じられる可能性もある。


電子辞書の利点

1.携帯便利性(軽量)

2.大情報量収録可能性(多数の辞書を搭載)

3.例文検索可能性

4.発音再生可能性

5.一括検索可能性

6.ジャンプ・サーチ連携機能性

7.検索速度性:外国人との会話中でも、咄嗟に引くことが可能;特に、上級者が英文を読んだり、訳したりするに際して、スピードを要求されるような場合は、電子辞書は大きな威力を発揮する。

8.検索便利性(綴りが曖昧でも候補を挙げてくれる)

9.検索履歴閲覧可能性


電子辞書の弱点

1.電池切れがある

2.落下など、衝撃に弱い

3.スクロールしたり特定機能のボタンを押したりしない限り広範囲を参照できない(たとえば、例文を見たい場合、ボタンを押さなければ、それ(ら)を見ることができない。特に、例文が多数にわたる時は、スクロール自体が面倒になる。ただし、この動作は「(引き)慣れ」によって克服できる類いのものであろう。