背くらべ
(Seikurabe)

作詞:海野厚 作曲:中山晋平
英訳:山岸勝榮

How Tall am I?
Lyrics: UNNO Atsushi  Music: NAKAYAMA Shinpei
English Translation: YAMAGISHI Katsuei (C)


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MIDI

1.
(はしら)のきずは おととしの
五月五日の 背くらべ
ちまきたべたべ 兄さんが
計ってくれた 背の丈
(たけ)
きのうくらべりゃ 何のこと
やっと羽織
(はおり)の ひもの丈

Two years back that mark on the pillar ―
My big brother notched it, May 5th, Boy's day
Mouth full of chimaki
Measured how tall I was that way
Yesterday, when I considered the slash
I found I grew only as tall as his obi sash



2.
柱にもたれりゃ すぐ見える

遠いお山も 背くらべ
雲の上まで 顔 出して
てんでに背伸び していても
雪の帽子を ぬいでさえ
一はやっぱり 富士の山

Now as I lean on this pillar considering
The heights of the mountains, range on cloudy range
Though each one appears on tip-toe standing
Without a snow-cap shining on its head
Quickly comparing, I can clearly see
The highest among them, after all, is Mount Fuji

無断引用禁止
Copyrighted


この詞・曲には著作権はありません。
MIDIはこちらからお借りしました。




以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。
興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。


ゼミ生の皆さん

山岸教授が「せいくらべ」を英訳なさいました。御訳を拝見し、気がついたことを記します。

《押韻》
 山岸教授の御訳には1番に脚韻が2カ所あります。dayとway、slashとsashが脚韻にあたります。

《誤訳から見る原詞の意味》
 ゼミ生全員が「兄さん」をbig brotherと訳せなかったのは、やはり英語が分かっていない証拠でしょう。題が「せいくらべ」ですから、olderやelderは論外です。
 「5月5日」の訳語ですが、教授はMay 5th, Boy's dayとお訳しになっています。私たちは、(教授のように同格関係を使ったゼミ生もいましたが、)全員Boy's dayではなく、Children's dayとしました。「こどもの日」が制定されたのは昭和23年、西暦1948年のことです。そして、この「せいくらべ」が作られたのは大正12年です。つまり、この歌が世に出たときは「こどもの日」という名前ではなかった訳です。当時は「端午の節句」で、3月3日のひな祭りに対する男の子の成長を祝う日であったため、Children's dayでは誤訳になるのです。
 「ちまきたべたべ」を私はchewingとしました。山岸教授は絶対にeatとはお訳しにならないであろうと思い、別の語を探しました。chewを選びはしましたが、「ガムじゃあるまいし・・・」と、何かが違うと違和感を抱きながら、結局適する語を探すことができませんでした。教授のMouth fullという訳語は、ほおばってもぐもぐ食べている様子がはっきりと見て取れる訳です。
 私を含めて、1番の最終行の「ひも」を全員string(s)と訳出しています。山岸教授は「ひも」の訳語にsashをお使いになっています。こちらの御訳を拝見したおりに、わたくしたちの「誤訳」に気がつきました。私たちのstringという英語は、もちろん教授がお訳しになったsashの訳語「飾り帯」の意味に取れなくはないですが、同時に羽織がほつれて、何か太い糸が出ている状態も指す可能性があるということです。私は紋付きの羽織は七五三の時以来着ていませんから、羽織自体は知っていても身近に感じることはありません。日本語が分かっていなかった証拠です。日本語が分かっていれば、「羽織のひも」とあれば、当然stringとは訳さないでしょう。なお、高浦さんが問題提起し、教授もブログで言及なさった「誰の羽織か」という点については、「兄の羽織」だということが教授の御訳から判断できます。

《まとめ》
 日本の唱歌や童謡を英訳して早10ヶ月です。訳した曲数は30以上になっているはずです。これくらい訳を作り、山岸教授のそれぞれの御訳と私訳を比べますと、自分の訳に違和感を覚えるところは間違いなく誤訳をしているか、英語的な表現なっていないことを認識します。例えば今回の例では、「やっと羽織の ひもの丈」をI grew only the length of my haori coat stringと訳しました。stringの誤訳は前述したとおりですが、加えて、the lengthなどという語を選ぶことが間違っています。そう感じてはいました。しかし結局適語を見つけられなかったため、英語的な表現とはほど遠い英訳になりました。同様のことが、「てんでに背伸び していても」「雪の帽子を 脱いでさえ」という箇所にも言えます。山岸教授のような「言い換え」を「真似ぶ」必要があります。
 個人的な見解ですが、押韻については、かなり難易度が高いと思います。@原詞の正しい理解、A語の選択の正確性、B語順の三つの力が備わっていなければ不可能です。特に私たちには@とAが不足しています。まずは、一語でも多く、山岸教授と同じ訳語を選択できるように、@を徹底し、Aを鍛えていく必要があります。

平成26[2014]年
  1月3日
     大塚 孝一