Lost His Way Back |
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こちらに古賀さと子の歌う「おうち忘れて」があります。
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この歌には著作権はありません。 |
ひばりのイラストはこちらからお借りしました。 |
以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。 |
ゼミ生の皆さん 山岸教授の御訳 Lost His Way Backを拝見し、学んだことを書いていきます。 お家忘れた 子ひばりは A young skylark, lost his way back お家忘れた まよいごの A young skylark, lost his way back こちらは、非常に興味深い御訳です。異なる原詞に対して、同じ訳語という点ではおそらく山岸教授が今までお訳しになった歌詞の中では初めての御訳ではないでしょうか。 また、こちらの御訳から感じることは、いわゆる「直訳」ではない御訳をしっかり見つめることが必要だということです。「直訳ではない」ということは、そこに発想の違いが必ずあるはずです。その点を追求していくことで、日本語と英語のさらなる理解が生まれるように思います。可能であれば英語のネイティブが同じ曲を訳したものがあれば、山岸教授の御訳とそれとを比較対照させることができますが、今のところ、この曲に関してはないようです。 母さんたずねて ないたけど Cried for his dear mom, but お山の狐は なかぬけど Foxes in the mountains don’t cry, but 上記の御訳はcryが非常に効果的に用いられていると思います。高浦さんが追求している「(鳥が)鳴く」という表現ですが、もしこの曲が課題曲だったとしたら、おそらくゼミ生は「母さんたずねて ないたけど」の歌詞にcry以外の語を当てたと考えられます。しかし、それは無用です。例えば、山岸教授の「春のうた」の御訳では、skylarkの鳴き声としてchirpが用いられています。その語をこの「おうち忘れて」で用いると、「お山の狐は なかぬけど」にありますcryとの関係が薄れてしまうわけです。よって、この歌に限って言えば、skylarkはcry forである必要があるのです。詩全体を見て、訳語を調整する必要を感じます。 風に穂麦が 鳴るばかり Only the wheat-in-ear whistled in the wind こちらの御訳、特に「麦穂」にあたるwheat-in-earは、山岸教授からの“間接的ご指導”と捉えました。現在の課題曲「故郷の空」の第2連に「玉なす露(つゆ)は ススキに満つ」という歌詞があります。私は先ほどまでA lot of dewdrops on the hanging ears of pampas grassと訳していました。しかし、山岸教授のwheat-in-earという御訳出を拝見し、こちらを真似たいと思います。 歌詞は比較的平易ですが、だからと言って英訳も容易であるとは言えません。しっかり分析をすることが必要だと感じます。 平成26[2014]年 1月21日 大塚孝一 |