人形
(Ningyou)
文部省唱歌
作詞・作曲不明

英訳:山岸勝榮 (C)


My Doll
Monbusho's Song for School Music Classes
English Translation: YAMAGISHI Katsuei (C)



無断引用禁止
英訳を引用する場合は必ず英訳者の氏名を明記してください。
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こちらにYouTube版の「人形」があります。
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1.
わたしの人形はよい人形
目はぱっちりといろじろで
小さい口もと愛らしい
わたしの人形はよい人形

My doll is a good, pretty doll
She has big bright eyes and fair skin
She has a pert little mouth
My doll is a good, pretty doll

2.
わたしの人形はよい人形
歌をうたえばねんねして
ひとりでおいても泣きません
わたしの人形はよい人形

My doll is a good, pretty doll
She sleeps so soundly to my lullaby
She never cries even when left alone
My doll is a good, pretty doll



無断引用禁止
Copyrighted


この歌に著作権はありません。
人形のイラストはこちらからお借りしました。




下の文章は大学院修士課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。
興味深い文章ですので、当人の了解を得て転載します。


山岸勝榮教授

山岸教授がお訳しになりました「人形」My Dollを拝読し、以下に分析を記します。ご多忙のところ恐れ入りますが、ご一読ください。

《第1連》
 第1連は、人形の“器量の良さ”を歌っていますので、good-lookingの観点からgoodをお選びになったと思われます。また、prettyについては、歌詞には表れていませんが、人形がprettyだからこそ、手元に置いて、大事にしているということを考える必要があります。この歌ができた当時は、人形はおそらく珍しいものであったでしょう。山岸教授が諸処にてお書きになっていますように、「古きものは古き目で見る」必要があります。現代のように、一人の子供が何体も人形を持っているのであれば、中にはprettyではない人形もあるのでしょうが、当時は一体が貴重だったと思われます。その文化的意味を踏まえられ、山岸教授はprettyをお使いになったと考えられます。ちなみに、わたくしは「よい」はgood、niceの選択に迫られましたが、niceを結果的には選んでしまいました。prettyもさんざん悩んだのですが、結局訳出はしませんでした。
 2行目は文構造の違いを認識する必要があります。日本語で身体的特徴を述べる場合は基本的に「髪が長い」「鼻が低い」などとします。身体的部位を主語に、形容詞を補語にして表します。一方英語では、基本的にhave[has]を用いて、人を主語に、身体的部位とその特徴を目的語に置きます。この点は英訳の際に忘れてはいけません。3行目も2行目同様の文構造の違いを認識する必要があります。また、pert little mouthという決まり切った表現は辞書の編集主幹を務めていらっしゃる山岸教授ならではの御訳出だと思われます。pert little mouthをgoogleで画像検索しますと、人形の画像が多くヒットします。

《第2連》
 2行目、3行目の御訳に見られる“簡潔さ”が最大の特徴と言えます。まず、2行目の「歌をうたえば」は、whenを当ててしまいそうですが、山岸教授は接続詞を使うことで訳が冗長になることを避けられ、単なる現在形で同行を表されています。もちろん、ここでの現在形の文法機能は「習慣」です。現在形で表すことで、whenやevery timeなどの接続詞が不要になり、文に簡潔さが生まれ、英語らしい表現になります。3行目もwhenの直後にあるべきshe isが省略されていることにより、この訳語が簡潔さを帯びています。
 上記の簡潔さに加え、山岸教授の御訳の特徴としてsoundlyとlullabyにも言及する必要があります。前者は英語圏の読者[聴者]のために、歌詞が歌う情景に鮮やかさを加える効果があります。後者は、「歌」をより具体的に表した訳語と言えます。ちなみに、「歌」の訳語では、lullabyを用いるべきか悩みましたが、子守唄を歌わなくても“寝る”人形もいるだろうと解釈をしまして、a songと訳しました。しかし、山岸教授の御訳を拝読し、子供が人形に歌う歌はやはり子守唄であると考え直しました。

 以上の点を考えますと、いつもと同じ結論ですが、日本語が分かるということ、そして英語が分かるということが良質な翻訳の絶対条件であることを確信いたします。

平成26[2014]年3月29日
  大塚 孝一