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以下の文章は大学院博士前期課程2年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深い文章ですので、同君の了解を得て転載します。 |
山岸勝榮教授 この度の御訳The Pasture in Morning Lightを拝読いたしました。ご多忙のところ恐縮ではございますが、以下に分析を書かせていただきますので、ご一読ください。 今回の御訳に限ったことではございませんが、山岸教授の御訳には、様々な翻訳技術が見られます。その一つとして挙げられることは、原詞の各連1行目、2行目に見られる連体修飾節が、いずれも文として訳されているところです。さらに言えば、原詞は各連ともに、1行目は2行目の修飾部になっていますが、御訳では、1行目と2行目はそれぞれ“独立”しており、各行に述語動詞が用いられているという点は非常に興味深いところです。 このように、連体修飾節が文として表され、かつ、1行目と2行目を独立させた形で表されている御訳としてあげられるのが「冬景色」です。同曲の「さ霧消ゆる 湊江の / 舟に白し 朝の霜」という原詞には、Light fog is clearing up in the inlet bay / Boats are thinly white with morning frostという英語が当てられています。 原詞は連体修飾節であり、主要部は行末の名詞になりますが、その主要部を修飾する節には多少なりとも“動き”が感じられます。例えば、第1連であれば、霧が立ちこめている様子。霧が主語であるので、実際の“動き”を表しているわけではありませんが、一面の霧が立ちこめている情景がまるで、一枚の写真のように、静止画として聴者に訴えてくるものがあります。それを山岸教授はbe動詞をお使いになり、表現なさっているわけです。しかも、言語は語順通りに理解されるという極めて当然の事実を踏まえると、The pasture in the morning is just a sea of mistという御訳は「牧場の朝が一面の霧」というような理解を英語母語話者はするはずです。他にも、第2連の1行目「もう起き出した」の「起き出す」が、山岸教授の御訳では、述語動詞化されていることが分かります。第3連1行目も、同様に、「今さし昇る」の「さし昇る」が御訳では、述語動詞として機能していることが分かります。 その他、細部に渡り、翻訳技法が用いられていますので、順番に挙げてまいります。まず、第1連の「鐘」、第2連の「鈴」には同じ語であるthe bellが当てられています。しかし、使われている動詞clangとtinkleがあることで、bellの“大きさ”が分かるような配慮がなされていると言えます。 次は第2連の「霧に包まれ」です。この原詞にはShrouded in mistという訳語が当てられています。この箇所ではshroudという比喩表現が用いられています。詩をより詩らしくする効果がある訳語と言えます。 また、原詞には文字として表れていない細部に渡る描写も為されています。grazing sheepのgrazingやTinged with the red of the rising sunのTinged、そしてShrilly whistles on, peep, peep, peepのShrillyには、英語圏の人々にとって、歌が歌う情景を想像しやすくなるような訳語の選択が為されているということが言えます。 様々なジャンルの唱歌・童謡に取り組んでまいりますが、今回の「牧場の朝」のように、情景を歌う格式高い歌の翻訳は翻訳者の力量が問われると感じております。この度の分析を通じまして、多くのことを勉強させていただきました。 平成26[2014]年4月17日 大塚 孝一 |