小 馬

(Kouma)

文部省唱歌
英訳:山岸勝榮(C


The Baby Horse
Monbusho's Song for School Music Classes
English Translation: YAMAGISHI Katsuei (C)



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MIDI


1.
はいしい はいしい 
歩めよ 小馬

山でも 坂でも 
ずんずん 歩め

お前が 進めば
わたしも 進む

歩めよ 歩めよ 
足音たかく

Giddyup, giddyup
Trot and trot, baby horse
Uphill roads and downhill roads
Go on and on, trotting
When you go on trotting
I bounce on your back
Go on trotting, go on trotting
Tramping blithely



2.
ぱかぱか ぱかぱか 
走れよ 小馬

けれども急いで 
つまずくまいぞ
お前が転
(ころ)べば 
わたしも転ぶ
走れよ 走れよ 
転ばぬように

Clip-clop, clip-clop
Run and run, baby horse
But don't rush and go
So as not to stumble and fall
If you stumble and fall
I'll also fall off you
Run and run, taking care
Not to stumble and fall





無断引用禁止
Copyrighted



この歌には著作権はありません。
MIDIはこちらからお借りしました。



以下の文章は私のもとで研究している大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君が私宛に書いたものです。
興味深い文章ですので、同君の了解を得て、転載します。


山岸勝榮教授

 山岸教授の御訳The Baby Horseを拝読しました。「リズム」と「日本語力と英語力」という観点より分析を試みました。ご多忙のところ恐縮ではございますが、ご一読ください。

《リズム》
 「小馬」は小気味の良いテンポが特徴です。この点について、故金田一春彦先生は『日本の唱歌(上) 明治篇』(1977)にて「小馬に乗ってぱかぱか走る時の趣が曲のリズムの上によく写されている」と評されています。山岸教授の御訳には原詞のリズム感が失われず写されています。第1連ではtrottingやtrampingなどのingが効果的に用いられています。第2連では、clip、clop、rush、stumble、not、butにあるそれぞれの母音が小気味よいリズムを感じさせます。「原詞を直訳しただけ」という意見もあるかと思います。しかし、次項で述べるとおり、例えば「ぱかぱか」に対してclopのみではリズムの面でも意味の面でも面白みがありません。clipとすることでリズムに乗れるということが言えます。
 また、「山でも 坂でも」はUphill roads and downhill roadsとなっており、「でも」とroadsが重なることでリズムが生まれます。
 その他、Go on and onにおけるonの繰り返し、I bounce on your backにおけるbounceとbackの頭韻、Run and runにおけるrunの繰り返しなども原詞のリズムを再現しています。

《日本語力と英語力》
 山岸教授の御訳を拝読する度、原詞を感じる日本語力とその意味を反映させる英語力がいかに翻訳において大切であるかということを強く感じます。今回の御訳では、とりわけ、以下の箇所について、その思いを強くしております。

 @「お前が 進めば」When you go on trotting
 A「ぱかぱか ぱかぱか」Clip-clop, clip-clop
 B「けれども急いで」But don’t rush and go
 C「つまずくまいぞ」So as not to stumble and fall

 @は、字面だけで考えれば、trotでも十分です。しかし、これでは、翻訳とは言えません。山岸教授はgo on trottingとお訳しになることで、trotの動作開始からtrotの最中までの様子を表現されています。また、この訳が、後続するI bounce on your backという動きを表す描写により臨場感を与えているとわたくしは考えております。
 Aは、「あめふり」の「ピッチピッチ チャップチャップ」に当たるSplish-splash, splish-splashを思わせる英語表現です。擬音語であるclopのみでの表現ではなく、clipが使われることで、その動きも読者[聴者]に感じてもらえる配慮がなされています。
 Bにおけるrush and goはまさに英語らしい表現です。原詞に“とらわれて”いる間は決して出てこない表現と言えます。Bと同様にCも英語らしい表現ということが言えるでしょう。and fallがあることで、論理が保たれますし、「つまずく」に“動き”が見られます。
 このように英訳に“一手間”加えることで原詞のニュアンスを忠実に別の言語で表現することができます。山岸教授の御訳を分析する度にお書きしていますが、このような翻訳技法は原詞を感じる「日本語力」と原詞を忠実に再現できる「英語力」の“二輪”が揃ってはじめて可能であるということが言えます。

平成26[2014]年3月11日
    大塚 孝一