木の葉のお舟
(Konoha-no-Ofuné)

作詞:野口雨情 作曲:中山晋平
英訳:山岸勝榮
©

A Leaf Boat

Lyrics: NOGUCHI, Ujo  Music: NAKAYAMA, Shinpei
English Translation: YAMAGISHI, Katsuei©




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こちらに「木の葉のお舟」のYouTube版があります。
こちらにmp3の音源があります。
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1.
帰るつばめは 
木の葉のお舟ネ

波にゆられりゃ 
お舟はゆれるネ
サゆれるネ


Swallows flying back home
Rest on a green leaf boat, right?
Drifting on the waves
The leaf boat drifts, too, right?
Just drifts, too, right?



2.
舟がゆれれば 
つばめもゆれるネ

つばめ帰るにゃ

お国が遠いネ 
サ遠いネ


When the leaf boat drifts
The swallows drift, too, right?
For the swallows to fly back home
The home is far away, right?
Just far away, right?



3.
遠いお国へ 
帆のないお舟ネ

波にゆられて 

つばめは帰るネ 
サ帰るネ

To their home it's a long way off
The leaf boat with no sails, right?
Drifting on the waves

Swallows fly back home, right?
Just fly back home, right?



無断引用・使用禁止
Copyrighted
©

この歌には著作権はありません。


次の文章は大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。
興味深い文章ですので、同君の了解を得て転載します。

山岸勝榮教授

以下にこの度の御訳を拝読しての意見を書かせていただきます。ご多忙のところ恐れ入りますが、ご一読ください。

 これまで山岸教授は野口雨情作詞の歌を数々扱われています。雨情は身近なものを歌の題材に取り上げ、熱心に観察を続けていたのでしょう。雨情の詩は想像力あふれる詩だとわたくしは感じております。その雨情の想像力に沿うかのように、山岸教授の御訳は原詞が歌う情景と作詞者の心までも表現しています。
 今回の「木の葉のお舟」の詩には、雨情が抱いているツバメへの優しさが感じ取れます。日本では、ツバメは益鳥として大切にされています。軒先にあるツバメの巣は日本ではお馴染みの光景ですし、ツバメがどんなにうるさくしようが、巣の下を汚くしようが、日本人は温かくツバメに接します。そのような文化的な一面を踏まえて、雨情はツバメを歌に表したのかもしれません。その点を山岸教授は汲み取られ、英訳をなさったのだと思われます。
 第1連では、“国”へ帰るつばめにflyとhome、rest、greenなどをお使いになり、読者[聴者]の想像をかき立てる技法が用いられています。特にrestには、日本人のツバメに対する想いが強く反映されているような訳語であるとわたくしは思っております。第2連では、「お国が遠いネ」に当たるThe home is too far away, right?のtooが、第1連、第3連を密接につなぐ一語と言えます。このtooがあるからこそ、第1連のrestが存在する理由になりますし、第3連においては、it’s a long way offが歌われる意義があります。
 一方で、この度の御訳は、山岸教授の御訳の特徴の一つでもあります「簡潔性」が表れている御訳ということが言えます。もっとも簡潔性が表れている御訳は「砂山」でしょう。ゼミ授業終了時刻の10分ほど前に山岸教授の御訳を拝読しますが、「砂山」の御訳を拝見したさいは、これまでにない簡潔性に、翻訳の有るべき姿を認識することができました。
 今回の「木の葉のお船」の御訳は、「砂山」の御訳ほど、簡潔性はありませんが、各連最終行の簡潔さ、「波にゆられりゃ」「波にゆられて」の箇所の簡潔さは、今後に生かすべき点です。
 常に思うことですが、原詞に文字として表れていないことを英語にするためには、原詞を読む力が必要です。上述したrestが訳出できないということは、詩の面白さという面と日本人の優しさを表す英語表現という面で“失格”です。単純にonと訳出をしたわたくしはいずれの面でも分かっておりませんでした。いつこのような訳出をすべきかということを今後も追い続けて、山岸教授の御訳から様々なことを学んでまいります。

平成26[2014】年3月28日
  大塚 孝一