金剛石 / 水は器
(
Kongoseki / Mizu wa Utsuwa)
昭憲皇太后御歌
作曲:奥 好義
英訳:山岸勝榮 (C)

The Diamond /
Water Obeys the Form of a Vessel

Written by
Shoken Kotaigo, the Empress Dowager
(the Wife of Meiji Emperor)

Music: OKU Yoshiisa
Engliksh Translation: YAMAGISHI Katsuei (C)



 


無断引用禁止
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こちらにYouTube版の歌唱があります。(右クリックで「新しいウィンドウを開く」)

金剛石も磨かずば 玉の光は沿わざらん
人も学びて後にこそ 誠の徳は表わるれ
時計の針の絶え間なく 巡るが如く時の間も
日陰惜しみて励みなば 如何なる業か成らざらん


As a diamond lacks sparkle without a good polishing
Your true virtue will certainly appear brighter after education
As the hands of a clock do not stop working their rounds
Nothing will prove impossible if you value time and do your best




水は器に従いて その様々になりぬなり
人は交わる友により 良きに悪しきにうつるなり
己に優る良き友を 選び求めて諸共に
心の駒に鞭打ちて 学びの道に進めかし


Water obeys the form of a vessel and takes any shape
Good company makes you good and bad company makes you bad
So you should choose company to lift you to their standard and stay with them
Whipping the horse of your mind, ceaselessly pursue learning




無断引用禁止 Copyrighted






以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。
興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。


ゼミ生の皆さん

山岸教授がお訳しになりました「金剛石/水は器」を拝読しました。以下、御訳から学んだことを書いていきます。皆さんと意見を共有できればと思っています。

《スピーチレベル》
今回の山岸教授の御訳を拝読し、真っ先に気がついた点、そして特修生の皆さんにも気がついて欲しい点として取り上げるものは、スピーチレベルです。
 原詞は非常に格調高い文語で書かれています。その原詞に対し、山岸教授の御訳では、意味だけではなくスピーチレベルに至るまで、忠実な英語が用いられています。例えば以下の箇所です。
 
 @「玉の光は沿わざらん」a diamond lacks sparkle
 A「誠の徳」true virtue
 B「如何なる業か成らざらん」Nothing will prove impossible
 C「学びの道に進めかし」ceaselessly pursue learning

 特に、Bのnothingが主語として用いられている点は、格調高い原詞にぴたりと一致している御訳と言えます。また、否定語を主語に持ってくる極めて英語らしい表現とも言えます。
皆さんも否定語を主語に据えた比較構文を、「書き換え」として中学校や高校で教えてもらったことがあるのではないでしょうか。例えば、Tom is the tallest boy in our class. = No (other) boy in our class is taller than Tom.などのようなものです。もちろん、事実としてはこの二文を等号で結ぶことは間違ってはいませんが、双方が表す文にはスピーチレベルの点で違いがあります。その点を英語教員が知らなかったために、無機質に、そして強制的に等号で結びつけるということが行われていたのです。
 辞書の世界もかつてはそうでした。「辞書学」が無かった頃は、このようなスピーチレベル上の配慮が訳語の上で全く為されていなかったと言えます。その点の改善を図った辞書こそ『スーパー・アンカー』のシリーズと言えます。
 皆さんはゼミ授業やその他の山岸教授のご講義を受講していますので、私がここに書いたことはすでに知っていることと思いますが、高みを目指す者同士として、改めて認識してもらいたいという願いから書いた次第です。

《英語の厳密性》
山岸教授御訳の特徴の一つとして、挙げられることは、英語の厳密性です。以下具体例を示していきます。
 まず、第1連1行目のwithout good polishingのgoodですが、原詞には文字として表されていません。このgoodは、polishの程度が低ければ、lack sparkleという状態が続くということを暗に意味しています。もちろん原詞は、程度の低いpolishingではなく、一流のpolishingを意味しています。polishingがgoodであるからこそ、diamondがsparkleを持つということになるのです。同時に、この箇所は、第2連の2行目への“布石”とも言えるでしょう。ここでwithout good polishingとすることで、第2連の2行目が一層引き立つ英語になっていることです。厳密性とともに、一貫性も見られる御訳ということが言えます。
 次に、第1連2行目のbrighterですが、比較級を表す接続語尾が付いています。virtueは「美徳」という意味ですから、明らかにプラスのイメージの言葉です。つまりvirtueという語は元々brightを帯びているのです。そのvirtueは教育を受けたのちにさらにbrightするということで比較級が用いられているのです。教育を受ける前の美徳と受けた後のそれに見られる違いが比較級で表されているということが言えます。
 そして、第2連1行目のthe form of a vesselのthe formも無視できません。この語は文字としては原詞には表れていません。もしこの箇所を文字通りWater obeys a vessel.などと訳せば、もちろん、意味は通じなくはないですが、やはり曖昧な英訳と言わざるを得ません。
 このような英語の厳密性は前期の第一回課題曲の「花」におけるDrops from the oar-bladesのbladesにも通じることだと個人的には思っています。

 今回、私は「スピーチレベル」と「英語の厳密性」について述べました。皆さんは私と着目する点が異なると思います。冒頭にも書きましたが、意見を共有していきましょう。

 平成26[2014]年 2 月20日
         大塚 孝一