山岸ゼミ 翻訳課題曲 |
肩たたき |
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かあさんお肩を たたきましょう Tap, tap, tap, tap, tap, tap, tap
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イラストはこちらから拝借しました。 |
以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。 |
ゼミ生の皆さん 山岸教授がお訳しになりました「肩たたき」の御訳を拝見しました。「ひらいた ひらいた」の時と同じように、わたしが英語教員であったらどのような授業をするかという視点から述べていきます。なお、今回は常体で書きましたことを断っておきます。 @肩とshoulderの違い:英和辞典のshoulder、もしくは、和英辞典の「肩」を引かせる。おそらくどちらかの辞書には日英語の違いが掲載されているはずである。両語間に見られるズレが明記されていなければ、英和辞典のbodyを引かせる。多くの辞書ではbodyの項に、正面からのイラストと背面からのイラストが掲載されている。ここから少々“脱線”し、場合によっては、「肩が凝る」の英語訳にも言及することができる。 A「肩をたたく」という題とTapping Mom's Shoulders and Ease Her Stiffnessに見られる相違:「肩をたたく」という日本語からは子供が親、あるいは祖父母の肩をたたいている“ほほえましい”光景が結びつく。もし、日本語学習者に「肩たたき」を教えるのであれば、「肩たたき券」なるものも教えても興味を持ってもらえるはずである。一方、英語では肩をたたくことはかならずしもそのような光景に結びつかない。よって、何のためにたたくのかを示す必要がある。ちなみに、「お父さんは部長に肩をたたかれた」という文から中学生や高校生が何を想像するかということを訊いてみると、教師が想定している答えとは異なるものが出てくる可能性もある。 B「たたく」とtapとpat:「たたく」にはtapとpatがある。英和辞典には類義語として、tapとpatの違いが言及されている可能性がある。和英辞典にはそれぞれの訳語の後ろに簡易的な説明が施されているかもしれない。もし訳語の上で違いが判断できないのであれば、英英辞典を引かせる。例えばLongman Advanced American Dictionary ではtapを【hand or foot】to hit your fingers or foot lightly against something, especially to get someone’s attention or without thinking about itとなっている。一方、patはto touch someone or something lightly with your hand flatとある。この説明を読めば、この歌での「たたく」はtapの方が適していることが分かる。ちなみに、「たたく」とtapにもズレがあることが分かる。「たたく」という行為は普通「手」で行う。しかし、tapはhandだけではなく、footで行うこともできるということだ。だからこそtap danceがある。 C白髪の英訳:「白髪」はgray hairという場合とwhite hairという場合がある。その違いは普通辞書に載っている。前者は白髪の本数があまり多くない場合。後者は一見して白髪だと分かるような場合(個人的にはわたしの髪はgray hairではなくwhite hair)。ここまで分かれば、なぜこの歌詞ではwhite hairではなくgray hairなのかという問いかけにも答えられる。 D「縁側」とverandaの違い:verandaを英和辞典で引かせ、イラストが掲載されていれば、「縁側」との違いがわかる。ただし、現代の若者は「縁側」も分からない可能性があるので、写真などをインターネットから引用しておくべき。この比較対照から派生した形で、建物に見られる日英語のズレ、例えば、「押し入れ」とcloset、「床の間」とalcoveなどに言及するのも可能。 E「日が当たる」とgetの関係:日本語では「日が当たる」というように、「日」を主語に立てるが、英語では通常はgetを用いて目的語に「日」を持ってくる。「日」の関連で言えば、「太陽は東から昇って西に沈む」の英訳を提示し、両言語間に見られる相違に注目させることもできる。 F最終連にbetterが用いられている理由:第1連で歌われていることは、子の「肩たたき」である。焦点はその行為にある。第2連では、その行為が行われている環境が歌われている。「肩たたき」のみでも“気持ちが良い”。それに加えて、日が照って、花も“笑っている”ということを考える必要がある。仮の話しだが、もし第2連がなければ、goodという訳語になる可能性も十分ある。しかし、第2連があることにより、goodの比較級であるbetterが用いられる理由が揃う。 以上です。英英辞典のところは辞書を調べましたが、あとは特に辞書を引くことはなく、頭の中で思いついたことを書きました。特にDのズレに関してはおそらく山岸教授が和英辞典上で初めて言及なさったことだと認識しております。 平成26[2014]年 1月24日 大塚 孝一 |