かもめの水兵さん
(Kamome no Suihei-san)

作詞:武内俊子 作曲:河村光陽
英訳:山岸勝榮 (C)

Seagulls the Sailormen
Lyrics: TAKEUCHI Toshiko Music: KAWAMURA Koyo
English Translation: YAMAGISHI Katsuei (C)




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(C)
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MIDI

1.
かもめの水兵さん
並んだ水兵さん
白い帽子 白いシャツ 白い服

波にチャップチャップ 浮かんでる

Seagulls the sailormen
Forming in a line, with sailormen's
White caps, white shirts, and white uniforms
Drifting on the waves, making a sloshing sound



2.
かもめの水兵さん

駆け足水兵さん
白い帽子 白いシャツ 白い服

波をチャップチャップ 越えていく

Seagulls the sailormen
Running fast, with sailormen's
White caps, white shirts, and white uniforms
Sailing across the sea, making a sloshing sound



3.
かもめの水兵さん

ずぶ濡れ水兵さん
白い帽子 白いシャツ 白い服
波でチャップチャップ お洗濯

Seagulls the sailormen
Dripping wet, with sailormen's
White caps, white shirts, and white uniforms
Doing the wash in the waves, making a sloshing sound



4.
かもめの水兵さん

仲良し水兵さん
白い帽子 白いシャツ 白い服
波にチャップチャップ 揺れている

Seagulls the sailormen
Being great friends, with sailormen's
White caps, white shirts, and white uniforms
Swaying on the waves, making a sloshing sound


無断転載禁止
Copyrighted





この歌には著作権はありません。
MIDIはこちらからお借りしました。
イラストはこちらからお借りしました。


以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君と、学部3年生の草皆高広君の手になるものです。
興味深い比較ですので、両君の了解を得て、転載します。


特修生の皆さん

山岸教授の御訳Seagulls the Sailormenを拝読し、以下に気がついたことを記します。

 まず各連の1行目では、「かもめの水兵さん」という原詞は、「かもめ」seagulls、「水兵さん」sailormenという「同格関係」で表現されています。「水兵さん」はsailorでも間違いではありませんが、最適とは言えません。sailorと訳すと、「水兵さん」の「さん」の部分でリズムが“余ってしまい”、歌いにくくなってしまうのです。この点を解消すべく、山岸教授はmenをsailorの語尾におつけになりました。こうすることで、リズムにも乗れますし、何より意味の面でも原詞に忠実、つまり、水兵さんは皆男性ということを連想させるという点でも相応しいということが言えます。また、「水兵さん」とmenと「ん」の音が重なるところも、歌っていて非常に気持ちがいいと個人的には思います(ただし、音声学的には「さん」の「ん」とmenのnは異なる音です。上に書いた「重なる」は、同じ音ということではなく、類似の音が同時に発せられるという意味です。)。

 各連の2行目の行頭は全てing形になっています。第4連を除き、「水兵さん」の“動き”がforming, running, drippingで表されています。第4連はbeing great friendsですから、“動き”というよりも“状態”を表しているということが言えます。

 そして、各連の2行目の後半部は、with sailormen’sとなっています。ここは、「水兵さんの」という意味で、3行目のWhite caps, white shirts, and white uniformsを従える形になっています。つまり「水兵さんの白い帽子、白いシャツ、白い服」という意味になります。私を含めた特修生の英訳は山岸教授の御訳とは異なり、2行目から3行目にかけて何もつながりがないため、唐突すぎて理解ができないということが言えるのではないでしょうか。山岸教授のwith sailormen’sという御訳は「論理を保つ英訳」であるということが言えます。しかしそれだけではなく、原詞の「水兵さん」との位置関係においても一致が見られる点で、非常に高度な翻訳技術ということが言えます。

 各連最終行の「チャップチャップ」という擬音語ですが、山岸教授はmaking a sloshing soundとお訳しになっています。私はsplashを動詞で用いましたが、品詞の違いよりも、splashを選んだこと自体が誤訳でした。sloshは、水がそれほど跳ねていない様子を表します。一方splashは水がかなり跳ねている様子を表します。こうしてsloshとsplashを比較し、何度も音読してみますと、不思議なことにsplashの方が何となく強さを表し、sloshの方が柔らかいように感じます。破裂音/p/があるかないかの違いかもしれません。いずれにしましても、こうして山岸教授の御訳と私のそれを比較しますと、様々なことに気づくことができます。理想は少しでも山岸教授の御訳と同じ語、文構造を使えるようになることです。

 山岸教授の御訳と私のそれとを比べますと、私は今回少々深読みをしすぎたようです。それは全体的に言えることですが、特に4行目の「浮かんでる」「超えていく」「お洗濯」「揺れている」の箇所では、考えすぎた結果、山岸教授の御訳とはかけ離れたものになりました。もちろん、全ての唱歌、童謡を訳す時には、「素直に考えれば良い」という訳ではありません。しかし、そうすべき時とそうすべきではない時があること、そしてその見極めは日本語に敏感であることが必要だということを学ぶことができました。次回の「二宮金次郎」は「金剛石/水は器」ほどのスピーチレベルではないものの、歌詞の内容が一部似ています。日本語の分析をしっかり行い、今までの山岸教授の御訳を拝見しながら、英訳を試みるつもりでおります。

 平成26[2014]年2月28日
  大塚 孝一


特修生の皆さん
毎回感じることですが先生の英訳を日本語の原詞と比較することは英語と日本語の本質を理解することに繋がります。今回は一連目を中心に学んだことを記していきます。
 一連目はまず主格が以下のように並列関係でならぶところから始まります。

かもめの水兵さん
並んだ水兵さん

先生はこの箇所を下記のようにお表しになってます。

Seagulls the sailormen
Forming in a line, with sailormen's

これにより英訳ではそのまま日本語の主格の並列関係を表すのではなく二行目は一行目を修飾する現在分詞として表してます。更にはその後をwith sailormen'sで表すことで

@その後の「白い帽子 白いシャツ 白い服」が何のことかをより正確に表している。
Asailormenとwith sailormen'sという形で日本語の並列関係に近づけている。そのため唄う時は日本語と同様のリズム感を生み出している。

という二つの効果が考えられます。ここで私は圧縮した曖昧表現といえる日本語の形を壊すことなく厳密な英語の構成を可能にするにはどのような思考過程を経るべきかを学んだ気がいたします。少なくとも日本語と英語の言語体系は異なるためこの様なことに配慮することは翻訳作業において絶対不可欠なことのように思えます。

そして歌は次のように続いています。

白い帽子 白いシャツ 白い服
波にチャップチャップ 浮かんでる

White caps, white shirts, and white uniforms
Drifting on the waves, making a sloshing sound

 私は作者が表したい部分こそこの「白い帽子 白いシャツ 白い服」の「白さ」の部分に思います。二行目でwith sailormen'sの形で終わらしていましたが先ほど挙げた効果とともに

With sailormen's white caps, white shirts, and white uniforms

の形ではなくWith〜の形で三行目を始める形にすることによりこのかもめの「白さ」が際立つ形になっています。
四行目のsloshなども最も相応しい擬声語が用いられています。

それ以降の連でも

Sailing across the sea,

Dripping wet

Doing the wash in the waves,

等の表現は私のそれと比べてみましても本物の英訳とはかくあるべしといった形で大変勉強になりました。

 平成26[2014]年3月1日
         草皆 高広