案山子(かかし) (Kakashi) 作詞・作曲者:不詳 英訳:山岸勝榮© One-legged Scarecrow Lyrics: Unknow Music: Unknown English Translation: YAMAGISHI, Katsuei© |
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1. One-legged scarecrow set up in the hillside rice field
One-legged scarecrow set up in the hillside
rice field |
この詞・曲には著作権はありません。 |
イラストはこちらからお借りしました。 |
下に掲載した文章は山岸ゼミ生の一人である佐々木健史君が、私による「案山子」の英訳と マザー・ターキー氏(日本人女性)のそれとを比較したものです。未熟な比較論ですが、その 努力を讃えて、ここに同君の了解を得て転載します。 |
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山岸勝榮先生 今回の英訳課題「案山子」におきまして、私が学んだことを踏まえ、山岸先生の御訳とマザー・ターキー氏のそれとの比較に取り組みました。 お手数でございますが、以下のリンク先にございます「共有」の「案山子 英訳比較2」のwardのデータをダウンロードしてください(末尾に転載;山岸)。 【英訳比較に関して】 「案山子」の原詩には、案山子に対する作者の考えが多くみられることを学びました。今回は、山岸先生とマザー・ターキー氏(大瀧公子氏、以下、大瀧氏)、お二方がお訳しになったものの違いと共に、ゼミ生の訳出を含めて考察を行いましたので、以下に掲載致します。 【一連目:山岸先生の御訳と、大瀧氏の英訳の違い】 ・「山田の中の 一本足の案山子」 「山田の中の」で、山岸先生は『in the hillside rice field』と、大瀧氏は『in the hillside paddy fields』と訳しておられます。「山田」は「山の中にある田んぼ」という解釈になりがちですが、「山」の持つイメージから、だいたいが千メートルほどの山と解釈します。しかしそこに田畑があることは稀であり、「山の周り」もしくは「山の麓」に田畑があるのが一般的です。その解釈は、お二方の御訳から伺うことが出来ます。特に、「田」の解釈が異なっております。この「田」は、「案山子」から収穫期の稲田を連想します。また、収穫時期の米を食べにくる鳥に対して置かれているため、「paddy」では原詩と案山子との関連性を考えると不適切な訳出ということが解ります。 「〜の」という箇所で、ゼミ生の皆さんの訳出では、「In the rice field of the mountain」、「In a rice field in a fold of hills」など「of」の訳出がありますが、「hillside」という名詞を形容詞句として用い、「田」の語の前に持って来ることにより、「hillside rice field」と訳出が出来ることを学びました。 ・蓑笠(みのかさ) 山岸先生は『a straw raincoat and a sedge hat』と訳され、大瀧氏の英訳では『raincoat on』となっています。山岸先生の御訳では、これ以上にない適切な御訳です。しかし、大瀧氏の訳出では、「raincoat」と、英語圏の人が見た際に、訳出不足のため誤解を招く可能性があり、「笠」は、「raincoat」からフード付きのcoatとも考えられますが、「蓑」の訳出がない以上、一語だけでは訳出不足と考えられます。 ゼミ生の訳出では、『A straw raincoat and hat』とございますが、『hat』の箇所の訳出において、日本人の被る笠と英語圏の人が被る笠には違いがあり、『sedge』の役割が重要不可欠であることを学びました。それを明確に英訳することが、「文化」の相違を明らかにすることでもあります。 ・「歩けないのか」 山岸先生は『Can’t he walk around』と、また、大瀧氏は『Why don’t you walk out』と訳しておられます。この箇所で違いが二点ございます。 一つは『can’t he〜?』と『why don’t you〜?』です。「〜のか」という原詩から、「自身に対してか」、「案山子に対してか」と二つの解釈が可能であり、ニュアンスも変わってきます。もう一点は、「歩く」の違いです。「walk」だけでは訳出不足であること、山岸先生の御訳では「walk around」と、「田んぼを歩くこと」、案山子の役割が理解できます。しかし、大瀧氏の「walk out」では、「歩く」ことはわかりますが、「出歩く」となり、原詩とは違う解釈になります。ゼミ生の訳出では、『Why don’t you walk?』、『Can’t you walk?』などがあります。原詩に対して訳出が忠実ではありますが、「walk」だけでは不足していると思います。 【二連目の違い】 一連目と似た歌詞ですが、二連目の二、三番の御訳では大きな違いがあります。 ・「弓矢で威(おど)して 力んで居れど」 山岸先生は、『He scares at the crows there with a bow and arrow』と、大瀧氏は『Although he is armed with a dreadful bow and sharp arrows』と訳しておられます。ここでは「作者の心情」が反映されている箇所です。「威して」の箇所で、そのことを山岸先生の御訳から学びました。この詩には、「楽しさ」が含まれていますが、大瀧氏の訳出における「dreadful」などを用いてしまうと、急に歌の雰囲気が「現実的」になってしまい、童謡に含まれる「歌の楽しさ」が損なわれてしまうことです。ゼミ生の訳出にも、そのことが見受けられます。『Try to overawe』、『Threaten』など、再三述べていることですが、語に含まれる意味や解釈が不足しており、大瀧氏の訳出からもそのことが伺えます。童謡を訳す上でその詩の背景を理解することの重要さを感じました。また、大瀧氏の訳出にある「although」は歌に合うのだろうかと思いました。リズムなどの関係性もありますが、本人に訊かねばわかりませんが、原詩に忠実過ぎるのではないかとも思います。 ・「かあかと笑ふ」 山岸先生は『Sniffs』を、大瀧氏は『caw, caw, laugh』と訳しておられます。この箇所で笑っているのは「烏」です。「laugh」は、人には使えますが、動物には使えず、擬人法であれば可能なことを学びました。大瀧氏の訳出には『laugh』が用いられており、この箇所は本人に訊かねばわかりませんが、擬人法を用い表現したのではないかと考えられます。また、「sniff」は原詩の背景を鑑みると、正鵠を射た表現ですが、「laugh」では「烏がどのように笑ったのか」が不明瞭です。 【小考察】 今回の英訳比較を行っている際に、翻訳の難しさを感じました。起点言語となる日本語を異文化言語へ翻訳する際に、一語の訳出の違いで誤解が生じてしまうこと、異文化言語の理解は勿論のこと、母語の文化の理解が何よりも必要であり、それを適した語で反映させることの重要性を学びました。そしてこうした英訳比較を行うことにより、言語間の文化的特質や差異に気付くことが出来、また発見できると思います。 平成25[2013]年10月22日 佐々木 健史
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