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 ゴンドラの唄
(Gondora-no-Uta)
作詞:吉井勇 作曲:中山晋平
英訳:山岸勝榮
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The Gondola Song
Lyrics: YOSHII, Isamu  Music: NAKAYAMA, Shinpei
English Translation: YAMAGISHI, Katsuei
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YouTube版による小林旭の「ゴンドラの唄」
こちらで映画「生きる」で主役の志村喬が歌った「ゴンドラの唄」の4番が聴ける(2:03頃)。
聴く者の魂を揺さぶらずにはおかない、名優中の名優による優れた歌唱である。



1.
いのち短し 恋せよ少女
(おとめ)
(あか)き唇(くちびる) 褪(あ)せぬ間(ま)
熱き血潮(ちしお)の 冷(ひ)えぬ間に
明日(あす)の月日(つきひ)の ないものを

Life is so short, fall in love, sweet maiden
Before the color of your deep-red lips fades away
Before your hot blood runs cold
Since tomorrow will never come to us



2.
いのち短し 恋せよ少女

いざ手をとりて 彼(か)の舟に
いざ燃ゆる頬(ほお)を 君が頬に
ここには誰(たれ)も 来(こ)ぬものを

Life is so short, fall in love, sweet maiden
Now let's step together into that gondola, hand in hand
Now let the fiery blush of your cheek mirror mine
Since nobody will come here to bother us



3.
いのち短し 恋せよ少女

波に漂(ただよ)い 波のよに
君が柔手(やわて)を 我が肩に
ここには人目(ひとめ)無いものを

Life is so short, fall in love, sweet maiden
Now drifting on the waves and just like the waves
Now put your soft hand on my broad shoulder
Since nobody will ever be here to see us



4.
いのち短し 恋せよ少女

黒髪の色 褪せぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬものを

Life is so short, fall in love, sweet maiden
Before the color of your raven hair fades away
Before the fire of your passion runs cold
Since today will never come to us



無断引用・使用厳禁
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【注】 3番の「波に漂(ただよ) 波のよに」の歌詞が「波に漂う 舟のよに」となっているものが多いが、ここでは小林旭が唄っている文句を採用した(詳細情報に関してはこちらの中ほどの「本書の序文から」の所に掲載されている歌詞を参照)。

以下以下の文章は、ゼミ特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君がゼミ専用
掲示板に書いたものです。興味深い比較ですので、両君の了解を得て、転載します。

ゼミ生の皆さん

 今回の課題曲「ゴンドラの唄」でも、原詞の理解に苦しみました。皆でもがいて産み出した英訳は、誤訳も含まれていましたが、それぞれの考えが反映されていて、非常に興味深いと思いました。
 山岸教授の御訳から、学ぶことは多々ありますが、今回、私は原詞の美しい“七五調”に注目し、教授の御訳の音節数との関係を探ってみました。初めての試みですので、何も発見することがないかもしれなかったのですが、幸いなことに興味深い点が見つかりましたので、以下に記します。
 考察対象が「ゴンドラの唄」一つでは議論も深まらないので、直近で扱った“七五調”の歌「荒城の月」も考察対象にしました。では、早速見ていきます。
 原詞はいずれも“七五調”ですので、各行の合計拍数は12拍になります。そして御訳の方ですが、各曲の行における合計音節を出しました。添付ファイルを見てください(例によってYahooボックスの「共有」の中にPDFファイルがあります【末尾に掲載;山岸】。ファイル名は「ゴンドラと荒城 01」です。)。行末にある括弧の中にある数字がその行の合計音節数です。

 同じ“七五調”の曲ですが、表を見ればわかるように、拍と各行の合計音節数との間には“弱い”相関関係がありそうです。原詞の12拍に対して、「ゴンドラの唄」も「荒城の月」も、その12拍に近い数値が出ています。単語の数でいえば、一語ないし二語程度の差と言えるでしょう。

 続いては、平均以外の欄を、表を横に見てみますと、数字に幅がある行があります。それは二行目と三行目です。二行目は12, 15, 11, 12となっており、第二連の二行目の音節数が他と比べると若干多いことが分かります(表の黄色の箇所です)。そこで、該当行の御訳を拝見しますと、以下の様な訳になっています。

   Now let's step together into that gondola, hand in hand

 上記の単語の中で音節数が多いものは、togetherとgondolaで、共に3音節からなる語です。together は let's としばしば共起するので、ここでは問題にしません。問題はgondolaです。山岸教授はなぜgondolaをお選びになったのでしょうか。私は以下の様に推測します。
 gondolaに当たる原詞は「舟」です。それを直訳すれば、boatになり、その音節数は1です。音節面から言えば、gondolaよりも、boatの方が、合計音節数が15から13に減ります。gondolaの場合とboatの場合とで歌ってみると分かりますが、後者の方がリズムに乗っています。しかし、山岸教授はあえてboatとはなさらずに、gondolaをお使いになりました。それはおそらく題名である「ゴンドラの唄」との一貫性を持たせるためだと思われます。「ゴンドラの唄」なのに、gondolaが一度も出てこないのは、若干奇妙です。ゼミ授業でもそれは話題になりましたが、なぜ題名が「ゴンドラの唄」なのかという疑問を持つことは、背景知識を知らなければ、当然すぎるほど当然の疑問であるわけです。
 その疑問を解消するために、教授は原詞の「舟」をgondolaに当てられたということが言えるでしょう。教授はリズムをおざなりになさってはいませんが、どちらかというと、意味的な重要度の方を重視なさっているということが言えるでしょう。
もう一カ所音節数で気になる行があります。それは、第三連の一行目です(緑の箇所です)。先ほどの行とは対照的に、こちらは、他の連の音節数と比べると、7と少なめです。教授はこの行「熱き血潮の 冷えぬ間に」を以下の様にお訳しになりました。

   Before your hot blood runs cold

 この御訳から分かることは、リズムにより乗せるために、これ以上の音節を増やすことは極めて厳しいということです。例えば、原詞は「冷えぬ間に」と打ち消しの「ぬ」があるので、does notとしてもいいでしょう。そうすれば、二音節増えますが、二音節あるbeforeを一音節のwhileにする必要があります。結局打ち消しを入れても一音節しか増やすことができませんし、前の行との一貫性も失われます。そして、何よりも英語らしくないということが言えるでしょう。教授の御訳は最低限の音節数で最大限に原詞に忠実であることの証明であるように私には思えるのです。

 今回は、原詞の“調”と教授の御訳における音節数との関係を考察しました。“七五調”である「荒城の月」と「ゴンドラの唄」に見られる、拍と音節数の間には、弱い相関関係がありそうでした。今後はその他の“七五調”の歌も考察対象にし、さらに幅広く考察していく必要があります。当然、“歌”の翻訳である以上、楽譜を含めた考察も視野に入れなくてはいけません。
また、同一のリズムにおける訳の違いも考察しましたが、大きなことは発見できませんでした。しかし、少なくとも、「ゴンドラの唄」の御訳について言えることは、教授は音節数よりも、歌としての一貫性に重きを置いていらっしゃることが分かりました。この点についても、他の歌の御訳を考察対象にし、教授の御訳の特徴を発見することを目的とし、今後取り組んでいきます。

平成25[2013]年
  12月17日
     大塚 孝一

「ゴンドラと荒城」pdf