僕のおとうと
(Boku no Otõto)

文部省唱歌

My Little Brother
Monbusho's Song for School Music Classes
English Translation: YAMAGISHI, Katsuei (C)


無断引用禁止

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MP3

   1.
  僕のおとうと 五郎ちゃん
  汽車のおもちゃが だいすきで
  おうちの中で ぴいぽっぽ
  朝から晩まで ぴいぽっぽ

 
    My little brother, Goro-chan   
     Really, really likes toy-trains   
      At home he plays choo-choo-train    
     From morning till night, choo-choo-train



   2.
  僕のおとうと 五郎ちゃん
  御本をよむのが お上手で
 どの本見ても 鳩ぽっぽ
  書いてもないのに 鳩ぽっぽ


      
 My little brother, Goro-chan   
     Really, really shines in reading books   
      He says coo-coo no matter the book   
    He says coo-coo as he reads


     無断引用禁止 Copyrighted



この歌には著作権はありません。




以下の文章は大学院博士前期課程2年生の大塚孝一君が書いたものです。
興味深い文章ですので、当人の了解を得て転載します。


山岸勝榮教授

山岸教授がお訳しになりました「僕のおとうと」を拝読致しました。今回も主に日英差に重点を置いて、分析を試みました。ご多忙のところ恐れ入りますが、ご一読ください。

《littleから見える日英差》
 「おとうと」の訳語にlittleがあります。原詞には文字として表れていない語ですが、この語が存在することにより、筆者の、弟に対する愛情を読み取ることができます。
 山岸教授の数々の御訳にはこの種のlittleが頻繁に登場します。例えば、「七つの子」「赤い靴」「靴が鳴る」が挙げられますが、いずれも、原詞には表れていませんが、この語があることにより、筆者が抱く対象への想いが表れています。
 一般的な日英間の相違点として、よく「愛情の伝え方、示し方」ということが議論されます。昨今の若者夫婦は別として、昔の日本人夫婦はわざわざ、愛を告白することはありませんし、「愛している」などと言う言葉は、歯が浮くような感じがする文句であると考える人が多かったでしょう。一方、英語圏では山岸教授が御著書(1995)でお書きになっているように、I love you.を言わないことが、離婚の原因の一つになり得るほど、愛情を示すことが重要になっています。このような文化的、言語的差異を踏まえた上で、littleの存在意義を考えると、日英間の相違が如実に表れている一語ということが言えます。ただ一つ、歌詞の翻訳には必ず“リズム”との関係があるため、やむなくlittleが訳出されないということもあるかと思います。

《第2連に見られる日英差》
 第2連2行目における日英差は山岸教授がブログにお書きになっている通りです(こちら参照)。
 3行目は、簡潔さが表れている箇所と言えるでしょう。no matter the bookの構文を考えれば、he readsが必要ですが、この語を省略することにより、同行に簡潔性が生まれ、リズムに乗せることもできます。
 4行目では、「書いてもないのに」の原詞に対して、as he readsが当てられています。日本語に見られる否定と英語に見られる肯定の差異が特徴と言えます。しかしそれ以上に、発想の違いに注目すべきです。原詞は、「書いてもないのに」とあるので「鳩ぽっぽ」の「文字」が、歌詞に表れていない主語と言えるでしょう。それに対して、山岸教授は「文字」ではなく、heを主語になさり、as he readsという訳出をなさっています。「読んでいるように」という意味ですが、裏を返せば、「読んでいない」ということであり、それはまさしく、「書いていない」ということを意味します。

平成26[2014]年4月5日
    大塚 孝一