作詞:野口雨情 |
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青い眼をしたお人形は アメリカ生まれのセルロイド アメリカ生まれのセルロイド 日本の港へついたとき やさしい日本の嬢(じょう)ちゃんよ The beautiful blue-eyed doll was born |
この詞・曲には著作権はありません。 |
人形のイラストはこちらからお借りしました。 |
以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。 |
ゼミ生の皆さん 山岸教授がお訳しになりました「青い眼の人形」を拝読し、感じたこと、考えたことを記します。 「青い眼をしたお人形は」 山岸教授は原詞にないbeautifulを補われています。この語は意味的にも必要ですし、“歌うため(つまりリズムに乗せるため)”にも必要な語です。ちなみに、私はlovelyと補いました。これらの語の違いは、山岸教授が思われた「青い眼をしたお人形」と私が思った人形が異なることを示しています。しかし、よく考えると、歌詞ができた当時の日本人にとって、「青い目」はやはりbeautifulであり、lovelyではないと言えます。 「いっぱいなみだをうかべてた」 この日本語に対して、山岸教授はHer eyes had long been filled with tearsという訳語を当てられています。日本語では「(人)が(目に)涙を浮かべる」という言い方をしますが、英語では主語にeyesを用いて、be filled withという高校生には馴染みのある構文で表すことができるわけです。それだけではなく、前行の時制との関係から、過去完了にすべき点、そして、人形が、船に揺られていた間ずっと泣いていたことがわかるlongという副詞を補えるかどうかが英語らしさの要素ということが言えます。 「わたしは言葉がわからない」 山岸教授は、該当箇所をI don't understand the languageとお訳しになりました。個人的にはこのtheも前項で扱った「英語らしさ」を表す語であると思います。第2連にthe Japanese portがあるため、場所が「日本」と特定されます。それをうけてのthe languageですから、ここでの「言葉」は「日本語」ということですが、Japaneseにする必要はありません。なぜなら、特定を表すtheが英語には存在しますし、なにより原詞には「言葉」とあります。以上の理由によりthe languageが適切だということが分かります。 「やさしい日本の嬢ちゃんよ / なかよくあそんでやっとくれ」 この二行の英訳は英語力が直接表れる箇所だと思います。「やさしい」に対して山岸教授はkindheartedをお使いになりました。私は単にkindとしました。やはり山岸教授の御訳語の方が、具体的でイメージしやすいと感じます。そして「やっとくれ」ですが、山岸教授はpleaseをお使いになりました。私はwill youと訳しました。原詞が疑問文ではないことを踏まえると、pleaseでなくてはならないと感じますし、will youでは原詞に比べると若干ぞんざいな印象です。そして、なによりもpleaseの前に「呼びかけ」を表すohがあるところが「英語らしさ」に直結します。 「なかよく」にはfriendlyが用いられています。「仲よし小道」の御訳と同じ発想と言えます。また、「あそんで」にはhold her nearという訳が当てられています。「人形を側に置いておく」ということですが、この訳語から「あそんで」が真に意味するところ、すなわち「大切に[大事に]しておく」という意味が読み取れます。 平成26[2014]年 2月1日 大塚 孝一 |