作詞:野口雨情 作曲:中山晋平 |
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This town,
that town 2. You've come a long way 3. In the sky the evening stars |
この歌には著作権はありません。 |
イラストはこちらからお借りしました。 |
次の文章は大学院修士課程1年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深いので同君の了解を得て転載します。 |
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山岸勝榮教授 この度の御訳This Town, That Townを拝読させていただきました。今回の分析は、山岸教授の御訳と『オーレックス和英辞典』に関わっていらっしゃる狩野先生の英訳を比較対照した結果でございます。以下にその分析結果を記します。 ご多忙のところ恐れ入りますが、下記URLの「共有」より、詩比較のためのPDFファイル(ファイル名「訳比較 20 あの町この町)のダウンロードをお願い申し上げます(下にpdfで転載;山岸)。 《第1連》(資料中の紫色) 山岸教授も狩野先生も「あの町 この町」をthis townを先に、that townを後になさっています。英語らしい表現という観点から、原詞の順番であるthat、thisの語順よりもthis、 thatの方が好ましいというお考えが反映されている御訳ということが言えます。また、山岸教授はinをお使いになっていませんが、狩野先生はお使いになっているという相違も興味深い点であります。inが表す「に」が原詞にはありませんから、山岸教授の御訳の方がより原詞に近いということが言えます。 「今きたこの道」の英訳も、使われている単語はほぼ同じであります。山岸教授は「道」にroadをお使いになっています。狩野先生は同箇所にpathを使われています。これらの御訳により、先生方が歌詞から思い出された「道」が異なっていることが分かります。山岸教授はある程度舗装された道を思い浮かべられたようです。一方の狩野先生は舗装されていない道が思い浮かんだということになります。 「かえりゃんせ」の箇所ですが、山岸教授はGo back againとお訳しになっています。againはgo backだけではなく、各連3行目にも掛かっていることが分かります。このagainが英語らしさを産み出すキーワードということが分かります。一方の狩野先生の訳ではit’s timeが使われています。こちらのサイトにて(URL http://olex.sakura.ne.jp/blog/2011/09/20/596/)「『もう帰る時間ですよ』と呼びかけるように訳した。」ということを書かれています。 《第2連》(資料中の赤色) 「お家が だんだん / 遠くなる 遠くなる」という箇所ですが、山岸教授は該当箇所をYou’ve come a long way / From your home, from your homeとお訳しになっています。平易な日本語に平易な英語を当てることにより、スピーチレベルが合っている点が特徴の一つです。また、日英間に見られる発想の違いにも注目すべき点があると感じます。狩野先生の表現もさほど難しい語が見当たらず、発想法の違いが見て取れる訳出と言えます。 少々飛躍のしすぎかもしれませんが、同箇所の御訳の違いは、日本と英語の文化の違いが反映されているのかも知れません。日本は一般的に“道”を重視します。例えば、「剣道」「柔道」「茶道」「書道」など、結果にたどり着くまでの過程を大切にすることが多々あります。「結果」ではなく、「過程」における“努力”を重んじる傾向も見られます。山岸教授の御訳のYou’ve come a long wayという御訳にあるa long wayがその“道”であり(もちろん“比喩的なものですが)”、山岸教授の日本人としての特性の一部が反映されている訳語と言えるのかもしれません。一方の狩野先生の訳には過程ではなく、“到着点”であるhomeが使われています。単なる思い込みかもしれませんが、先生方の訳語の違いは先生方の民族性の違いが表れているように感じます。 《第3連》(資料中の緑色) 第3連の御訳には大きな相違が見られません。強いて述べるのであれば、「星が出る」という箇所において、山岸教授はare coming outとお訳しになっていますが、狩野先生はare beginning to appearと訳されていることです。beginningと言えば、聖書のIn the beginningを思い浮かべますが、それとこの訳語のbeginningは文法的な機能も異なりますし、意味も異なりますので、関連性は薄いと思われます。 《全体を通して》(資料中の青色) 全体的には山岸教授の御訳は狩野先生の英訳に比べますと、原詞に近い語をお使いになっています。また、簡潔さという点におきましても、山岸教授の御訳の方が簡潔です。狩野先生の訳は冗長というわけではありませんが、例えば第1連を見ますと、This Town and That Townのand、In this town and in that town,のin、It’s time to go back home,のit’s timeやhomeなどは、正確に言えば、原詞に無い表現が英語に表れていると言えるでしょう。 《わたくしの訳の反省点》 原詞への忠実度を目指すべきか、リズムに乗せることを目指すべきか、英語らしさを優先させるべきかなどという点、つまり、どのような時に何を最優先させるべきかという点がまだ分かっておりません。次回の“宿題”では一行でもこの度の反省が活かせるように、訳出に取り組んでまいります。 平成26[2014]年3月26日 大塚 孝一
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