カスタマーレビュー 10 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 貴重な学習和英辞典編纂論とその実践の書, 2003/10/11
重厚な書である。既存の学習和英辞典の全てを詳細に調査し、その長所短所を知り尽くした上で、日本人英語学習者にとってどのような和英辞典が望ましいのかを説得力豊かに論じている。既存の学習和英辞典の短所、欠陥が、その辞典名と共につぶさに挙げられているから、挙げられた辞典にとっては、さぞや不快な書であろう。しかし著者は終始冷静に、学問的、建設的にその欠点、欠陥理由を述べ、全てに代案を示している。したがって、反論しにくいであろう。 全体は5部、21章から成り、第1部は「和英辞典の史的側面」、第2部は「学習和英辞典編纂論とその実践」、第3部は「学習和英辞典に関する諸問題とその解決法」、第4部は「学習和英辞典と英語教育」、第5部は「学習和英辞典関連の問題」である(各章は省略する)。 和英辞典編纂に関連して、これだけの理論書と実践書が書ける人は、現在の日本にはそうはいないであろう。氏にはニューアンカー和英辞典、スーパー・アンカー和英辞典、スーパー・アンカー英和辞典という名著があるが、いずれも「山岸和英」、「山岸英和」と称されるほど、同氏との結びつきの強いものとして知られる。そういう著者だからこそ、こういう書物を生み出せたに違いない。 なお、本書のような分厚い(全479頁)研究書が4、000円の定価に抑えられているのも、書評子のような万年講師にはありがたい。 |