7. 教室英語にユーモアを



 「ユーモア」とは何か
 英語の授業にはもっと「ユーモア ( humor) 」があってよいと思います。もちろん「英語」のユーモア です。「ユーモア」は英語国民、特にイギリス人が最も高く評価すると言われている精神活動の1つで、悲喜こもごもの人間世界を冷静な目で客観的に見つめ、それを滑稽さ・おかしさの面から捉えて表現しようという精神的態度、または表現されたその滑稽さ・おかしさをいいます。アメリカ人のユーモアはイギリス人のものよりも (やや)大袈裟なところがあるように思います。「ユーモア」は「風刺」(satire)と異なり、“攻撃性”を含みません。
 「ユーモア」と似たものに 「ウイット」(wit)がありますが、これは「機知」とも言い、人間の“理性”に訴えようとする点で、人間の“感情”に訴えようとする「ユーモア」と異なります。なお、「ジョーク」(joke)は、人の笑いを誘うことを目的として言うことやその行為をいいますが、これには笑いの要素以外に “皮肉”や“風刺”が含まれます。

 日常的に「ユーモア」を活用する。その具体例。
 以下にご紹介するのは、私が日常的に教室で、学生たちに対して使っているものです。私が事ある毎に覚えた表現ですが、“ネイティブ”ではありませんから、使い方が最良かどうかは(いま)ひとつ自信を欠きます。しかし、私の授業を参観する“ネイティブ”たちはよく笑ってくれますから、多分うまく使えているものと思います。5例だけご紹介します。

 1)授業中居眠りをしている[しそうな]生徒・学生に。
   (Do) you want to get your beauty sleep ?  ◆この“get one's beauty sleep”は、本来、美容と健康のために、夜中の12時前に就寝する場合に用いたようですが、広義には、余分な睡眠[仮眠]を指していっています。したがって、「私はお昼を食べたあとで睡眠をとらないと一日中機嫌が悪くなっちゃうのよね」というような場合にも用いられます。これを英訳すれば、I get bad-tempered if I don't get my beauty sleep after lunch.のようになります。
  
 2)廊下などを走る[急ぐ]生徒・学生に。
   Why are you in such a hurry,〜? Where's the fire? ◆日本人は急いでいる人をからかう場合に、「火事はどこだい?」などと声を掛けませんが、英語ではこのように言うことが少なくありません。たとえば、アメリカの白バイ警官は、スピード違反のドライバーに対して、これを使うことがあるでしょう。 Why are you in such a hurry, Taro? Where's the fire? と、人名を付加して言うのが良いでしょう。
 
 3)生徒・学生が自分(教師)に何か嬉しいことを言ってくれた場合に。
   Could I have that in writing? ◆人から褒められた場合の応答表現には、Thank you for your compliment.(お褒めに預かりありがとうございます)、Thank you. It's nice of you to say so.(そう言ってくださってありがとうございます)などがありますが、これらには,普通はユーモラスな感じはありません。それに対して、Could I have that in writing? には、その感じがあります。文字通り、「そのことを書き留めておいていいですか?」という意味です。

 4)英語は嫌いだと言う生徒・学生に。
   Oh, come on, 〜. Smile when you say that.文字通りには、「それを言う時には、微笑みなさい」という意味です。 Oh, come on, Taro. Smile when you say that. のように、2)の場合同様、相手の名前を入れて言うほうが英語的だと思います(次の例の場合も同様です)。

 5)落ち込んでいる生徒・学生に。
   What's the matter, 〜?Cheer up! It's not the end of the world.「この世の終わりじゃあるまいし」ということで、worldの代わりにrainbowを用いることもあります。
 
 わずか5例ですが、このようなユーモアに富んだ英語表現を時機を得て、日常的授業で使用すると良いと思います。小著 『ユーモア英語のすすめ―こんな時・こんな表現』(丸善ライブラリー;268番)はこのようなユーモラスな表現ばかりを収録したものです。ご参考になると思います。


3.「なぞなぞ」「ジョーク」は頭脳を刺激する!
 日本の学校英語教育には「知的興奮」を覚える機会が極端に少ないように思います。たとえば、疑問詞“who”“what”の復習をするような場合でも、以下にご紹介するような「なぞなぞ」「ジョーク」を、授業の中に織り交ぜて行なえば、用法定着と英語感覚の体得と、一挙両得になるように思います。答えは敢えて記しません。やさしいはずですから、その面白さを体験してみてください。
 
  1.  Who writes nursery rhymes and squeezes oranges?― Mother Juice!

  2.  Who's at the door?―The invisible man. Tell him I can't see him!

  3.  Who's bigger, Mr. Bigger or Mr. Bigger's baby? ―Mr. Bigger's baby. He's
    a little bigger.


  4.  Who was the fastest runner? ―Adam. He was the first of the human race.

  5.  Who wrote the Cliff Tragedy?―Eileen Dover.

     ◆以上のうちでは、5番目の例が最も難しいかも知れません。
  
  6.  What do you call a man who was born in Spain, raised in Africa, got married
     in Hawaii, and died in San Francisco?―Dead!

  7.  What did the ocean say to the shore?―Nothing. It just waved.

  8.  What's yours, but is used more by others than by yourself?―Your name. 

  9.  What's the difference between a TV and a newspaper?―Did you ever try
    to
hit a cockroach with a TV? 

 10.  What are students' favorite three words?―I don' t know.

     ◆9番目、10番目の例など、いいですね!

 ついでに、次の例にチャレンジしてみてください。
  
 11. "I bet I can make you say purple."
    "I bet you can't."
    "What colors are the American flag?"
    "Red, white and blue."
    "I told you I could make you say blue."
    "No, you didn't. You said you could make me say purple."
    " And I did!"

  12. "If I had seven bananas and gave you three, how many would I have left?"
    "I don't know. At school we always do our arithmetic with apples
   and oranges.
"

  13. "This soup is green." "That's strange. It wasn't green when I made
    it three
weeks ago."

 ほんの数例ですが、このような楽しい、少々頭を使わなくてはならないような「なぞなぞ」や「ジョーク」を教室英語にはもっと導入する必要があるように思います。今から40年近く昔、まだ私が高校生だった頃、ドイツ人の先生(女性)が英会話の授業を担当なさったのですが、その時に紹介して下さったのが、この種のものでした。本当に楽しく、知的興奮が得られて、私は毎週の授業が楽しくて楽しくて仕方がありませんでした。その時の思い出が、今日の私の英語研究に対するエネルギー源の一部になっていることは間違いありません。その先生は、私達生徒に「生涯学習」の何たるかを教えて下さったように思います。