今から数十年前、フロリダのCoral Key Parkという海洋保護地に、Flipper
  
(日本名「わんぱくフリッパー」)という、人間の気持ちや言うことがとてもよく分かる
“知人派”の)イルカが棲んでいました。でも、“親米派”かどうかはだれにも分かりませんでした。
 



5 小泉首相の
   
 「私は根っからの親米派」に思う


  小泉純一郎首相は、過日(2001.6.29)、米国ワシントンに赴かれる機内において、日本人記者たちのインタビューに答えて、「私は親米派だと思います」と言われた(と記憶します)。「朝日新聞」(2001.6.30、夕刊)によれば、米国観を尋ねられた同首相は、「私自身、根っからの親米派だと思っている」と答えておられます。
  私は、「親米派」とか「親日家」といった言い方を見聞きするたびに思います。首相(大臣・大使など)のような、一国を代表する立場にいる人が、それほど簡単に「親○派」「親○家」だと公言して良いのでしょうか。冷徹な目で外国を見る立場にある人としては、ここ一番と言う時に、その目に曇りが生じないでしょうか。そうした立場にある日本人が、自らに言及して、「私は根っからの“親日派”です」とおっしゃるのなら分かりますが(今時“愛国者”という言い方は流行らないでしょうから)。
  「ライシャワー(元)駐日大使は大の親日家[親日派]であった」というような言い方の場合もそうですが、日本人は、日本を好いてくれる外国人と見ると、安易に「親日家」「親日派」と決めてかかるようです。日米安保条約以降、米国に対しては、日本の政治家の多くが「親米派」になったようです。
  私は一国を代表する政治家(大使など)には、「親○家」「親○派」であるよりも、まず、「知○家」「知○派」であってほしいと思います。たとえば、「ライシャワー(元)駐日大使は大の知日家[知日派]であった」と言う具合にです。ライシャワー(元)駐日大使は、ご自分では(少なくとも、公式の場では)、「私は、根っからの親日家[親日派]です」とはおっしゃらなかったのではないでしょうか。
  ところで、ブッシュ米大統領は、なぜ京都議定書 (the KyotoTreaty)から脱退するのかという質問に答えて、“We will not do anything that harms our economy, because first things first for the people who live in America, that's, that's my priority.”(我が国の経済にとって不都合になることはいっさいやりません。なぜなら、私が最優先すべきはアメリカに住む人々ですから)と断言しています。これが米大統領のホンネであるのか、ご自分の背後にいる支持者たちを意識してのことかは定かではありませんが、ブッシュ大統領とは、地球規模でものを考える人ではなく、ご自分の国(とりわけ、その経済)の存亡を最優先させる人なのだという印象を強く持ちました。米国の7%排気ガス削減に同意なさったのは、前任者のクリントン氏だったはずです(日本の削減目標値は、確か、6%であったと記憶します)。ブッシュ大統領は、前任者による発言を無視もしくは軽視していると思われても仕方がないでしょう。このような人から、「私は根っからの親日家[親日派]です」などという言葉は、まず聞かれないと思います。
  日本人はともすると、「米国は日本の大事なパートナー、したがって、パートナーの悪口は言わない」と結論付けたがるようですが、これも楽観的過ぎる物の見方ではないでしょうか。その考え方が妥当であるのなら、米国は、我が国に対してもっと(日本的な意味で)誠実であろうと思います。英語の“partner”には、日本語の「パートナー」に付着している、「(仲間の)悪口は言わない」というようなニュアンスは付着していないように思います。
  いずれにせよ、「親○家」「親○派」といった言葉は、もっと慎重に使ったほうが良いと思います。「知○家」「知○派」のほうが適当である場合が多いことを日本の政治家や、日本を代表する人々はしっかりと認識しておかれる必要があるでしょう。
  なお、「親日家」「知日家」の英語対応語に関しては、『スーパー・アンカー和英辞典』(学習研究社)をご参照ください。


追記: その後、小泉首相は、ブッシュ米大統領に言及して、「もっとも親日家と言っていいくらい、日本通ですね」と言われたり、シラク仏大統領に言及して、「こんな親日家の大統領はいないね」と言われたりしておられましたが、上掲の説明からもお分かりのように、日本国の首相としては、慎重さに欠けた発言であろうと思います(平成13年7月4日、フジテレビ放送)