7 英和辞典の選び方
        最終決定は学習者自身で
           ―好きになれ使いこなせそうなものを


 書店の辞典コーナーにところせましと並べられた多種多様な英和辞典。その中から、自分に合ったものを一点だけ選び出すというのは、初級者はいうにおよはず、中級者以上の学習者にとっても、けっして容易なことではない。最近は新刊辞典が陸続と現われており、その感をいっそう強くする。
 そんな中で、中学生が初めて英和辞典を購入する場合、オーソドックスな手順だが、やはり、英語教師にアドヴアイスを求めてからのほうがよい(ほとんどの書店では店員たちは辞典の特徴については何も知らない)。相談を受けた教師は、責任を持って、初級者向け辞典を数点、学習者に紹介してやり、最終決定は学習者自身が下すように指導したい。教師に相談しない場合でも、学習者は、書店ではかならず何点かの辞典を見くらべながら、その中から自分が「好きになれそうな」、「使いこなせそうな」ものを1点だけ選択するようにしたい。選択の第一理由に出版社の知名度のみを挙げるのは感心しない。
 高校生の場合も、やはり高校生を対象として編纂された辞典の中から、初級者の場合と同じく、「好きになれそうな」、「使いこなせそうな」ものを1点だけ選ぶとよい。その場合も、英語教師に相談してから書店に向かうほうが賢明である。
 高校生・受験生・大学生が学習英和辞典を選択する場合には、語義の多い重要後に、最初に基本語義を置いて、基本的意味から発展的意味を簡潔に示すことを編纂方針にしている辞典を選択するとよい。こうして編纂された辞典は、意味の記憶にも役立つので便利である。また、この種の辞典は文法・語法説明にも無駄がなく、語彙の社会的差異、地理的差異などについても配慮が行き届いているのが普通である。
 社会人一般の場合は、上の条件を備えた中型辞典を一、二点と、収録語彙の多い、大型辞典を一点と、計二、三点を必携の書としたい。

【本稿は「週刊読書人」(平成元年[1989]、3月27日号)に掲載されたものです】